“利益商品”をつくりブランディングするためには、
菓子のカテゴリーを戦略的に考える。

茨城県つくば市

コート・ダジュール

代表取締役社長

中山 満男

はんじゅくちーず

内山 中山社長は職人としての技術だけでなく、洋菓子専門店をどうやって商いとして継続してやっていくか、どうやって売り上げを伸ばして従業員を守っていくかという経営的な視点をいつもお持ちです。以前から一番お聞きしたかったのは、お店がブレイクするきっかけになった商品はどのお菓子でしょうか。

中山 やはり「はんじゅくちーず」ですね。これを出すことで経営的にガラッと展開が変わりました。まず、最初の店舗は厨房と倉庫、売り場を入れて18坪の小さなテナント店でスタートしました。そこで5年半くらいやることになるのですが、8尺のショーケースに三角カットの生ケーキなどを15種類くらいと生クリームのデコレーションを並べて、あとは袋に入れた焼き菓子が7~8種類あって、その詰め合わせが置いてあるような普通の洋菓子専門店でした。普通ではありましたが、生ケーキには独自の考えを持って特に力を入れました。おかげさまで小さな店の外にお客様の行列ができるまでになり、周りにもご迷惑をおかけすることやスタッフも増えたことから、借り入れをして新たに出店しました。
しかし、借金は初めてでしたから、「今度はそれだけのお金を返さなければいけない。」と思うとすごくプレッシャーを感じ、「人も雇わなくてはいけないし、返済もしないといけない。」と考えれば考えるほど今のやり方では返せないと思いました。
そこで思いついたことが“利益商品”をつくることです。私の実家が和菓子店を営んでいましたので、和菓子には店の売り上げを増やし利益を生み出す饅頭や羊羹のような“利益商品”があることを思い出したのです。そして考え出したのが「はんじゅくちーず」なのです。

内山 なるほど、「はんじゅくちーず」はお店のスケールアップのための“利益商品”だったのですね。

中山 私はお店に並べるお菓子を生ケーキ、半生菓子、焼き菓子、冷凍菓子に分類しています。「はんじゅくちーず」は半生菓子に入ります。賞味期限が冷蔵で5日間以内のものが私の中では半生菓子なのです。「はんじゅくちーず」の他、冬場限定の「はんじゅくちーず」のチョコバージョンや生チョコサンド、生チョコサンドの玉露抹茶バージョン、半熟プリン、ロールものなどたくさんアイテムがあります。
また、10年ほど前から「はんじゅくちーず」をお客様がご自分でとれるように冷蔵のオープンショーケースで販売するように工夫しました。
こうして「はんじゅくちーず」を軸にした“利益商品”のカテゴリーを確立させることで、他の店との差別化を図り「コート・ダジュールの菓子」のブランディングをしてきたのです。


工場にはバッケン、ZENが並ぶ
内山 今後もそのやり方で進んでいかれるのでしょうか。

中山  いいえ、急速に変化する経営環境に柔軟に対応しなくてはなりません。今後人手の問題を考えると、売り上げの拡大はせずに利益を出すことを考えなくてはなりません。半生菓子はこれ以上伸ばそうと思っていません。「はんじゅくちーず」も今のやり方では日産1万個が目いっぱいです。これをもっと伸ばそうとしてもロスも出てリスクがあります。
これからは内山社長が昔からおっしゃられるように焼き菓子にシフトしていきます。ギフト菓子、特にお土産ギフトです。半生菓子でつくったブランドのバリューを焼き菓子にどんどん注ぎ込んで「コート・ダジュール」じゃないと買えない焼き菓子をつくり上げます。焼成するオーブンは「ZEN」が3台と「バッケン」が5台ありますし十分に対応できますからね。

内山  恐れ入ります。これからの「コート・ダジュール」様の焼き菓子がどのように展開され、新たな経営の軸になっていくのか楽しみに拝見いたしております。

材・ライティング

七洋製作所 代表取締役社長
内山 素行(うちやま もとゆき)

小さな頃から空手を学び、その上達とともに空手の魅力に引き込まれる。空手道の全日本大会で3度の日本一となる輝かしい経歴を持つ。空手で会得した相手との技の駆け引きや、間合いの読みはビジネスの極意にも通じる。時代を読み、常に新たな展開を提案する内山氏は、菓子業界で“菓子店の羅針盤”と呼ばれ、菓子づくりを志す職人が認めるオーブン「バッケン」を製造販売する株式会社七洋製作所の代表取締役社長をつとめる。自らの発想でつくりあげたオーブンは、日本の通商産業省が設立したグッドデザイン賞を3回も受賞する快挙を成し遂げた。1956年、日本国 福岡県生まれ。

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