将に来たらんとする時代に正面から向き合い
解決策を見つけ出す。

香川県高松市

菓子工房ルーヴ

専務取締役

野﨑 幸三

讃の岐三(SAN NO KISAN)

内山 菓子工房ルーヴ様は、今年でちょうど創業40年をお迎えになると伺いました。現在は3店舗をご経営で、今回お邪魔させていただきました本社・空港通り店には、衛生・製造・品質管理のための最新設備を充実させた“ルーヴ菓子創造研究所”という見事な製造ラボを2014年にスタートされました。このように洋菓子専門店を大きな規模にされた理由をお聞かせいただけますか。

野﨑 私どもの店は代表の藤井が私の姉と2人でスタートした小さな小さな店でした。間口が2m80㎝、店舗と厨房を合わせても10坪か11坪、洋菓子とパンを製造販売していました。そして、3年目に差しかかったところで私が手伝いで参加したのです。
やがてパンをやめブライダルを中心にギフト系の洋菓子店に絞り込みました。何か特別な拡大路線をとったわけではなくて、毎日製造の現場に出てくるさまざまな問題を少しでも解決しようと動くことで、2店舗目、3店舗目の出店につながり、どちらかというと売り上げを伸ばすために店舗を増やしたのではなく、製造をスムーズにするために出店せざるを得なかったとも言えます。
今までは、それでよかったのです。しかし、人手不足や後継者の問題が耳をふさいでいても聞こえてくるようになってしまった今の経営環境を考えた時に、いい菓子をつくるためにはスタッフの働く環境をとにかくよくしなければ、目指すものは何も生まれないと感じたのです。敷地は駐車場も入れて800坪、お借りしているところを含めると1,000坪あります。これからの洋菓子専門店には人がつくる温かみのあるお菓子と、機械を導入してシステマチックにつくる洗練されたお菓子、この両方が必要だと思います。これを融合させるために“ルーヴ菓子創造研究所”をつくりました。
今までのように、2〜3年ですぐに手狭になるようなその場しのぎではなく、もっと10年、20年という長いスパンで先を見越したラボ計画……“菓子創造研究所”と言うのは、そういう意味です。これからは魅力的なお菓子のレシピを創造すると同時に、設備を入れてそのつくり方も創造していかなくてはいけないと思ったのです。

内山 どのように運営されているのでしょうか。

野﨑 製造を生チーム、焼き、バースデー、そしてプロダクト事業部の4つのチームで行っています。プロダクト事業部は乳菓、ドーナツ、フィナンシェ、クッキー、ラスク、この5本柱を全部こなすチームです。最初は菓子づくりが未経験のスタッフも、設備を使うシステムの中で今は熟練者です。こうして効率よく製造が回ることで一気に時短4時間を実現しました。


製造ラボにはZEN20枚差しが2台、
10枚差しが1台並ぶ
内山 今回、乳菓「讃の岐三(SAN NO KISAN)」をご紹介いただきましたが、洋菓子専門店が乳菓をおつくりになるとは驚きました。

野﨑 おかげさまで私どもは創業の頃からたくさんのお客様に支えられています。しかし、その方々も私どもと共に年をとります。そして、いつの日か生クリームたっぷりのショートケーキよりも、小さなお饅頭がいい、なんて思い始めるのです。若い頃からルーヴの洋菓子に親しんでいただいた皆様が、私たちのお客様ではなくなる可能性が大いにあるのです。
ここ高松市もどんどん若者が減っています。今、人口が42万人を切りました。このままの出生率なら2050年には32万人になり、一気に10万人減ってしまいます。ですからご年配のみなさまにも召し上がっていただける“洋菓子専門店がつくる乳菓”、こうした“和テイストのお菓子”を洋菓子店のノウハウを加えてつくり、和と洋の垣根をとっぱらってしまいたかったのです。この菓子づくりは私にとって将来を見据えた一世一代の仕事でした。おかげさまでお客様に認められて浸透していってくれました。


讃の岐三 みるくつつみ(右)と、まっちゃつつみ(左)
内山 乳菓は「スチームラックオーブンZEN」で焼成されていると伺いました。

野﨑 はい。「ZEN」はやわらかな火と高圧蒸気でラックオーブンでありながら、乳菓に微妙なニュアンスの焼き色を添えます。私どもにとって必要なのは、いろいろな菓子に多目的に対応できるオーブンです。乳菓も焼く、クッキーも焼く、ドーナツ、フィナンシェ、その他にもたくさんあります。「ZEN」は、1台で4役、5役、そして、すべてをこなしてくれます。

材・ライティング

七洋製作所 代表取締役社長
内山 素行(うちやま もとゆき)

小さな頃から空手を学び、その上達とともに空手の魅力に引き込まれる。空手道の全日本大会で3度の日本一となる輝かしい経歴を持つ。空手で会得した相手との技の駆け引きや、間合いの読みはビジネスの極意にも通じる。時代を読み、常に新たな展開を提案する内山氏は、菓子業界で“菓子店の羅針盤”と呼ばれ、菓子づくりを志す職人が認めるオーブン「バッケン」を製造販売する株式会社七洋製作所の代表取締役社長をつとめる。自らの発想でつくりあげたオーブンは、日本の通商産業省が設立したグッドデザイン賞を3回も受賞する快挙を成し遂げた。1956年、日本国 福岡県生まれ。

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