私にとっての「一生一品」は、
私のつくるお菓子全部、つまり「一生全品」。

東京都葛飾区柴又

お菓子屋 ビスキュイ

代表取締役社長

駒水 純一郎

アントルメ

内山 お店に入ると、たくさんのお菓子に包まれているような感覚になって、思わず「楽しい!」という言葉が浮かんできました。お客様も楽しそうにお菓子を選んでいらっしゃいますね。

駒水 ありがとうございます。そうおっしゃっていただけるととてもうれしいです。私はお菓子をつくることが本当に大好きで、楽しくなってどんどんつくってしまいます。ですからお店にはたくさん品数を出します。品数は多い方が楽しいに決まっています。プチガトーは最低50~60種類、ちょっと多いと70種類になる時もあります。こんなに品数を出すなんてすごいねって褒めてくれる方もいらっしゃいますが、もっと品数を減らした方がいいとも言われて、35種類くらいに減らしたこともあります。でも、何だかショーケースが物足りなくて元に戻しました。焼き菓子も入れると250種類以上あります。
お店のレイアウトは、お客様がお菓子を手に取りやすいようにその距離感を大切にしています。今、厨房は40坪くらいありますが、売り場は20坪ちょっと。わざと大きくしませんでした。品数の多さと適切な距離感で、“たくさんのお菓子に包まれる”とお客様に感じていただくことはすごく大事です。
こうしてみると私にとっての「一生一品」は、私のつくるお菓子全部、つまり「一生全品」でしょうか。

内山 「楽しい!」と感じたのには、そういう考え方があるのですね。なるほど、「一生一品」でなく「一生全品」なのですね。それにしてもこれだけの品数を出し、売り上げを上げていくためにはスタッフが充実していないとできませんね。

駒水 はい、私一人では、どうしようもありません。私は職人気質がとても強くて、以前はジェノワーズを合わせるのもグラサージュをかけるのも全部自分でやっていました。「よこせ、俺がやるから。」みたいな感じだったのです。しかし、「私は、何でも自分でやらないと気が済まないオーナーシェフになりたいのか?」と自分に問いかけ、「このまま忙しいだけではダメだ。なるべく人に任せよう。」と思って、その時からスタッフに任せるようになりました。


バッケンは開店以来22年間使っている
内山 思うように任せられましたか。

駒水 思うように、とまではなかなかいかないこともありましたが、人は「頼んだぞ。」と任せると、その信頼に応えようとします。若いスタッフもそうです。
それから作業効率を上げるために機械を使うことも意識しています。私は機械化という言葉が嫌いで、今まで“手づくり”と“機械”は、相反する要素として考えていました。でも、“機械を使う手づくり”という概念もあり得る時代になったと思うのです。フードプロセッサーは機械と言わないのに、ちょっと大きなデポジッターや「バッケンカッター」は機械と言います。でもこれからは、全部道具として見てはどうかと思うのです。こうした機械をうまく導入することによって、スタッフに安心して仕事を任せることができるのではないでしょうか。その安心感や信頼感がお店の楽しい労働環境をつくることができると思います。


コンセプトの違うアントルメが20台以上並ぶ
内山 ところで、シェフの「一生全品」の中から、“一品”をご紹介していただくのは酷かもしれませんが、お願いできますでしょうか。

駒水 「アントルメ」ですね。私が一人でつくっていた頃から10台くらいは並べてました。平日は予約を含めて30台ほど、土日には50台は必ず出ます。多い時には100台出ることもありますね。アントルメの基礎になるのがスポンジです。アントルメの大切な要素の一つです。いいスポンジを使うからこそ魅力的なアントルメができるのです。だからこそ私はここにこだわり店名を「ビスキュイ」にしたのです。
「バッケン」はやっぱり普通のオーブンより早く上がります。気密性の良さなのでしょう、しっとりと上がります。「スチームラックオーブンZEN」は回転しますからムラ焼けしません。考えてみれば、オーブンも進化する大型の機械です。これからは、こうした道具を巧みに使いこなす力も必要な時代なのですね。

材・ライティング

七洋製作所 代表取締役社長
内山 素行(うちやま もとゆき)

小さな頃から空手を学び、その上達とともに空手の魅力に引き込まれる。空手道の全日本大会で3度の日本一となる輝かしい経歴を持つ。空手で会得した相手との技の駆け引きや、間合いの読みはビジネスの極意にも通じる。時代を読み、常に新たな展開を提案する内山氏は、菓子業界で“菓子店の羅針盤”と呼ばれ、菓子づくりを志す職人が認めるオーブン「バッケン」を製造販売する株式会社七洋製作所の代表取締役社長をつとめる。自らの発想でつくりあげたオーブンは、日本の通商産業省が設立したグッドデザイン賞を3回も受賞する快挙を成し遂げた。1956年、日本国 福岡県生まれ。

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