Vol.33
ニューヨークの繁盛店

テレビを作ることを日本の国は止めました。戦後日本を引っ張ってきたテレビ製造販売はどうしてだめになったのか。安価な製品を中国が作りだし、性能がいい韓国製が、お客ニーズを研究して入り込んできた。しかし最大の原因は、日本の製品は、質は高いのですが、刻々と変化するお客様の本質的なニーズの掌握が、できていなかったと言われています。お客様の本質的なニーズ、このことを考えてみます。
お客様がお菓子を買われる動機は二つしかありません、自分で食べる(デーリー)と、人に差し上げる(ギフト)、デーリーは自分で食べるわけですから目的は一つです。しかし、ギフトはとても多様です、記念日、誕生日、お使い物、粗品、御返し、冠婚葬祭、クリスマス、バレンタイン、ホワイトデイ、節句、お彼岸、ひな祭り、考えたら限りがありません。まさにこのギフトは、専門店の非常に大きな市場であることは間違いありません。問題はギフトをどこから買うかという事です。ギフト市場は存在しているのに、ギフトの売り上げが落ちてきた、この原因はなんでしょうか?答えは、日々のお客様(デーリー)の減少だと思います。
原理原則はデーリーで日々のお客を引っ張り、ギフトに繋げていく、この流れは不変だと思います。只、今迄いつもデーリーを買いに来られていた日々のお客様が、違う場所でデーリーを買われだしている事実です。専門店にギフトを買う時にだけくる、それではその店はギフトのシェアは広がりませんし、尻すぼみになっていくばかりです。日々のお客様を増やす、これは非常に大切です。

ニューヨークの活気のある店

先日、次男が住んでいるニューヨーク(NY)に会いに久しぶりに参りました。
空港に到着して感じるドライな空気感がとてもなつかしく子供のようにウキウキした気分にさせてくれるのも、NYです。
今回は、子供が帰国するためにお世話になった方々への御挨拶と、NYの食の事情を見て回ることが目的でした。
「イータリー」というマンハッタンのど真ん中にある、イタリアの食に特化した食材とレストランの複合店、ここは凄い活気があり人が溢れていました。このお店は日本にもありますが、スケールの大きさ、商品アイテムの豊富さは比較になりません。
イタリアに特化したさまざまの食材(パン、ケーキ、焼き菓子、鮮魚、チーズ、ワイン、肉、ピザ、パスタ、野菜、食材用器具、コーヒー、アイスクリーム)
おまけに、イタリア食材を使った商売のセミナー教室まで併設され、その全てが非常に鮮度のいい状態で素材の販売、調理、そしてそれぞれのジャンルでのイートインコーナーで味を楽しめます。私はこの店にスルーオーブンが入ればいいだろうなと感じました。目の前で焼けているものが、温かい状態で食べれる。そしてその商品がギフトになる、そんなイメージです。

イートインの可能性

菓子専門店は駐車場の関係や、菓子に特化するという考え方から、イートインはなるべくなら、しないほうがいいのではと、私は考えておりました。しかし「イータリー」を見てイートインの考え方が少し変わりました。私はピザのコーナーで、パスタとピザを注文しました。ピザ窯から取り出す姿と、茹で上げるパスタ、その香りに包まれて、店員の対応の素敵な事。笑顔でどっから来たの?NYはどうだい?この料理にはこのワインがいいと思うよ、いい旅になるといいね、こんな会話が自然と出てきます。
考えてみますと五感を取り入れたイートインのスタイル、目の前に素材が並び、目の前で焼き上がり、香りで包まれる。そして、ケーキやクッキーと一緒に、店員の暖かい接客と会話を味わっていただく。そんなイートインを含めた五感ゾーンがあることは、とても新鮮な発見でした。
ギフトを販売するためのエレガント+日々の出来立て感を出すマルシェ+出来立の菓子と店員との会話を食べさせるイートイン。とても広い「イータリー」の店内が、お客様で溢れている姿を見ていると、ここにもデーリーのお客様を増やしていく答えがあると思いました。

デーリーの源

デーリー(日々のお客様)が多ければ、そのお店は「活気」に包まれます。そして「活気」は正直です。もう一度振り返ってみてください、自分の店を外から見て五感を感じますか?活気を感じますか?物事に行き詰った時に同業者だけではなく、色々な活気のオーラを出しているお店を見学されるのもいいと思います。
「活気」は、その時代で支持されていえるものだけに与えられる、称号のような気が致します。

(このブログはNANBANプレス46号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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