Vol.44
アメーバ経営

新年あけましておめでとうございます。

このエッセイも書き始めて 30 年以上の歳月 が経ちました。沢山の方々との出会いの中で 感じたことや、私自身が会社を経営する中で 思ったことなどを文章にしてまいりました。 今回は、現在私が取り組んでいる工場改革に ついて書かせて頂きます。きっかけは一冊の本 との出会いです。その本は京セラ創業者稲盛 和夫氏が書かれた、『アメーバ経営』という本 です。この考えを工場の生産体制に取り入れ たいと思ったことがきっかけでした。 62 歳にな り更なる高みを目指してみたいという思いで す。

私の友人は皆定年を迎え、今後老後、何をし ていこうかと考えている中、世の中とは逆行い たしますが、幸いにも自分の会社ですから定 年がありません。そこであともうひと踏ん張 り、働くことへのギアを上げてみようという挑戦です。

アメーバ経営とは会社の中を小さく分類 (アメーバ化)していき、それぞれにアメーバの リーダーを作り、リーダー自身が採算を考え て、各アメーバごとに生産原価と労働時間を 管理して、いかに効率的に利益を出すかとい う、簡単に書くとそのような内容です。

深く知りたい方は、是非この本をお読みくだ さい。きっと感銘を受けられると思います。

工場長への就任

アメーバ経営を実践するために、昨年の9 月機械製造の工場長を兼務するように致し ました。そして、工場をこのように分類しまし た。部品を製作する部署。デッキオーブンを製 作する部署。スチームラックを製作する部署。 リムジンを製作する部署。塗装を行う部署。 検査出荷を行う部署。研究開発部署。この様 に分けていき、それぞれのリーダーがその日使 用した材料、製作した製品、それにかかった時 間と費用などを各個人が終業時に記入し、そ れを集計して毎日、総評と日報を工場長に出 すというシステムです。この日報はパソコンで全 社員が毎日閲覧(ドロップボックス使用)でき るようになっています。その後、食品工場、各 営業マン、メンテナンス、総務と広げていきまし た。現在では毎日、約 90 件位の日報が私のとこ ろに届きます。パソコンとはこれほど便利であ ったのかと今更ながら感じております。私は 今、北海道の千歳から福岡に帰る飛行機の中 ですが、営業もしながら、全員の日報を見て 返事を書きながら、そしてこの様にエッセイも 書いているというわけです。日報を読んでおり ますと、皆の考えや動きが隅から隅まで解り、 「あー無駄だな」とか、「よくやってるな」とか 感じます。会社経営とは社員一人一人の考えや 意見を聞き、間違った時には正し、会社の方向 性を間違わないように機敏に、対応していく ことが重要であるとつくづく痛感致しており ます。

マルチ化への挑戦

物づくりの中で労働時間短縮の問題と人 手不足の問題は、中小零細企業を経営する ものにとってはとても大きな問題です。この問 題を解決する方法は「マルチ化」しかないと考 えております。マルチ化こそが小が大に勝つ方 法だと。分かり易く話してみます。繁盛店は 何故生まれるのか、私は約8000件の店舗 を回りました。その経験から、オーナーである 職人さんが美味しいものを作るだけでいいと 思われているお店は、売れないお店です。しか し、作るだけではなく、それをいかに売るかを 考えることができるオーナー、又は販売する 才能豊かな奥様がおられるお店は、繁盛店と なっていきます。要するに「作ること」「売るこ と」二つをやれるということこそ、商売にとって のマルチ化であると思います。

マルチ化とは、日本語で訳すと多能化とい う言葉になります。実はオーブンの製作現場 におきましても、日報を読んでおりますと、一 つの仕事しかしていない人がいることに気づき ます。

そこで、何故この人にもっと色々なことをや らせないのかと問いかけますと、難しいから、 彼には無理ですなどの返事が返ります。そこ で皆で考えて、作業手順書を作るということ を行いました。要するに口で伝えるのではな く、写真と解説で解りやすく、漫画チックに手 順書を作ることにしたのです。そうすると、 今まで一つのことしかしなかった人に、色々な仕 事に振り分けることができるようになりまし た。このことにより、残業時間の軽減につなが りました。今後も色々な改善を行わななけれ ばと強く感じております。

専門店を取り巻く状況は決して良いもの ではありませんが、何事も工夫していきながら 「為せば成る」の精神で頑張らねばと思ってお ります。

2月には幕張でモバックショウが開催されま す。今回は、職人さん不在の店づくりをテーマ に七洋の実験店舗「マザーセツコ」をブース内 に作りました。
是非、弊社ブースにご来場くださいませ。
心よりお待ち申し上げております。

追伸
私自身もマルチ化を目指し、社長業、機械 工場長、食品工場長この三つをやりこなそう と実践しております。本当に忙しいです

(このブログはNANBANプレス59号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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