Vol.11
お客様をつなぎとめるには

先日あるお店を訪れた時、「内山さん、又近所に新しい洋菓子店が出来るんだよ」オーナーが困惑された顔で私に話されました。全国を見回してみますと今後この傾向は加速され、ますます店舗は増えていき、競争は激化の一途をたどっていくと思います。

それは何故か?菓子という業界自体に大きな可能性があり、小さな専門店一つをとってみても原材料を加工して自分で商品を作り、値づけは自分で決めることができるメーカー的要素を含み、又お菓子は嗜好品であり鮮度を要求される事から、アジアからの安価な菓子を買うことは非常に少ないと思います。

この業界は世の中の色々な業種と比較してみますと、非常に魅力のあるところに位置しています。若手の独立者が非常に少ない和菓子業界に比べ、洋菓子業界は大手量販店ではできないオーナーシェフの個性を打ち出す商品作りや店舗作りが盛んに行われ、多くの独立が続いております。世の中のスウィーツブームの裏側で、まさに生き馬の目を抜く競争の世界があることは事実です。そういった中で、いかに今来ておられるお客様をつなぎとめる事ができるか、又どうやったらお客様を増やすことができるか、この事は大きなテーマです。

「ファン」と「トゥルー・カスタマー」の違い

お客様との接点は、お菓子だけでしょうか?接客だけでしょうか?ここのところに考えを持っていく事が大切な気がします。そこでお客様に考える考え方を、「ファン」と「トゥルー・カスタマー」というふたつの言葉で考えてみました。「トゥルー・カスタマー」という言葉は耳慣れない言葉かと思います。「トゥルー・カスタマー」直訳すれば「真の顧客」となります。

「トゥルー・カスタマー」のトゥルーはTRUEつまり、「真実」と言う意味であることはもちろんですが、それぞれのアルファベット文字の意味を考えてみますと、「T」はTRUSTつまり「信頼」、「R」はRESPECTつまり「尊敬」、「U」はUNDERSTANDINGつまり「理解」、そして、「E」はENDLESS「永久に続く」と言う意味を持っています。このそれぞれが集まって、「真実」が出来上がっているのです。ですから、「ファン」とは、その店の菓子を愛好する人のこと、「トゥルー・カスタマー」とはその店のオーナーの菓子に対する考えに共鳴し、菓子だけではなくその店の存在を重要と思っていただける方、こういった分けかたができると思います。

ファンというレベルでは他店がそばに出来た時、そちらに流れていく可能性は十分あります。しかし、トゥルー・カスタマーとはその店を信じきり、その店を絶対に自分にとって必要な店と思い、決して変わらないお客様です。その方々が大きな電波力となりその店の広告塔としてその店を広めてくれる。店がどれだけのトゥルー・カスタマーを持っているか、これは競争が激しければ激しいほど大切な事になってくると思います。どうしたらトゥルー・カスタマーを作れるのか、この事を深く考えて見ますと、自分自身がやっている仕事に対して深く理解してもらい、生き方や考え方を共鳴してもらう活動をすることではないかと思います。

菓子教室

小さなフランス料理店などは、よくその店のオーナーシェフが近所の奥様を集めて料理教室を開いておられる事に気づきます。そしてそこにこられる奥様方は店の最高のお客であることは間違いありません。

先日、私どもの会社に神戸からesコヤマの小山社長を招き講習会を開催いたしました。 小山シェフはTVチャンピオン洋菓子部門で何度も優勝され、2年前に兵庫県三田にて独立、オープンから2年で1店舗年商5億を売り上げる驚異的な超繁盛洋菓子店です。 実技講習が終わり、私とのフリートークショーの中で菓子教室を開かれている話になりました。現在20クラスを自分のお店で運営され5クラスが初級クラス、残りの15クラスが中級と上級クラスになっているそうです。「何故、菓子教室をやられたのですか」とお聞きしたところ、「教える菓子は全て自分の店と同一の配合で行い、店と同レベルのことを味覚的に目指しています。逆にこうすることによってesコヤマの菓子はこんなに高級な素材を使い、手の込んだことをやって商品になっているとわかって頂けますね。授業で話す会話の中で私自信の菓子に対する考えを理解して頂く、こういった菓子だけではない接点が、お客様とのかかわり合いをもっと強固なものにする事につながって行くと思います。又逆に、生徒さんから色々な菓子に対する考えを聞くことにより、お客様が何を求めて居られるのかを発見し、その事は今のお店にたくさん活かされています」この話は先ほどのトゥルー・カスタマーの話しと、まさに共通します。

前に出したプレスで書きましたが、「空中戦」「マルシェ」そして今回の「トゥルー・カスタマー」この三つは今後のお店作りの中で大きなテーマになると思います。

(このブログはNANBANプレス29号に掲載されたコラムです。)

お問い合わせ

お困りのことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。