Vol.3
クリスマスの思い出

久しぶりに学生時代の友人が訪ねてきて、私が菓子の業界の仕事をしていると知っている彼がこんな話をしました。
「家の近くに洋菓子店ができて、そこのお店はケーキも美味しいし、マスターも愛想が良いから、気に入ってよくケーキを買いにいっていたんだよ。お得意様を回るときだとか、お遣い物をする時には心がけて、そこのケーキを買うようにしてたし、クリスマスケーキは娘や息子は違うお店がいいと言ったけど、いつも美味しいケーキを買わせてもらってるから、このお店で今年のクリスマスは買うと決めていたんだ。家族に最高のクリスマスケーキを贈ろうと、5000円もするクリスマスケーキを買うことにしたんだよ。ところが聞いてくれよ、いつもひいきに買ってやっているのに、一番大事なクリスマスに俺に古いケーキを売りやがって。とにかくいつも買うケーキとはぜんぜん違うんだ。スポンジも固くて、クリームもいつもと味が違うし、こんなものを売りやがって、もう二度とあそこでは買わない。」凄く立腹して話しました。
言葉は荒いですが、彼は本当に裏切られたという気持ちで一杯でした。
私はお菓子屋さんの事情を話し、クリスマスはそういうこともあるんだよと話しましたが、その後、友人がその洋菓子店に行ったかどうかは、定かではありません。
クリスマスは、いつもケーキを食べない人までもがケーキを食べるときであります。
その店の鮮度のいいケーキの味を知っている人は、舌が覚えていますし、味覚とは一度美味しいものを食べると、後退しないことも事実です。
どんなに忙しい時でも鮮度の追及と品質の維持は非常に大切なことだと思います。

クリスマスが赤字

今から5年くらい前になりますが、南品川にあります東京支店を改造して実験店舗カスタードボーイを造りました。目的は洋菓子店の実際の経営を体感することです。その為には、私自身が材料を仕入れ、人を使い、家賃を払い、お客様からお金を頂き、毎月の決算を行いたかったわけです。又2年目にはカスタードボーイをスウィートニューヨークと名前を変えて、リニューアルとそれにかかるコストを知る試みもしてみました。
お店5坪、厨房12坪、勿論駐車場などはありません。初年度の売上げは5300万でした。現在その場所は南蛮塾になっておりますが、それをやった3年間は大変なエネルギーを使いました。しかしその経験は私どもがお客様に繁盛提案をやっていく中でとても大きな知的財産になっております。
クリスマスは華やかでとても忙しく、連日徹夜が続き、パートさんやガードマンを雇ったり、我が社の営業スタッフが手伝ったりでとにかく活気がありました。ケーキも本当によく売れました。皆寝ずに頑張ってくれて12月25日の夜まで頑張りました。
スタッフの一人が、こんなに売れたら今年のボーナスは良いですよねと私に言うものですから、私もそうだねとうなずいたりしておりました。12月が終わり1月に色々な支払いをしていくと驚くなかれ、12月は赤字である事に気づきました。そんなことはないと何度計算しても赤字になりました。あらたに色々な反省をし、気を締めて翌年も翌々年もクリスマスをやりましたが3年続きで赤字でした。私なりに分析してみると、イチゴがその時期異常に高いこと、生クリーム主体ですから粗利が低いこと、パートその他の固定費が高いことなどが原因になっていました。
しかし、クリスマスの頑張りが、ホワイトデーやバレンタインにつながることも体験しましたし、ホワイトデーは焼き菓子中心ですから利益が出やすいことも解りました。

オーナーと従業員とのギャップ

私がクリスマスを体験して、もっともつらく難しいと思ったことは、クリスマスが赤字と言うことをスタッフに中々言えなかった事です。知っているのはオーナーの私だけで、その他のスタッフは利益が出ていると思い昇給を期待している、このギャップです。あれから年月が経ちましたからこうやって文章に出来ますが、あの時はどうやって理解させようかと悩んだものでした。
「ない袖は振れない」と言う言葉があります。まさしく利益が出てないと社員に対しての待遇の改善などは出来るわけがありません。
いかに利益を出すか、この難しさを本当に体で感じることが出来ましたし、あらためて焼き菓子を売らなくてはいけないと、痛感いたしました。
我が社の今年のテーマは「粗利をいかに上げるか」、このテーマにそってミニ展を全国で開催いたしております。「こうしたら焼き菓子が売れる」という、かなり確信にせまった提案ができあがっております。お近くで開催しますときは是非一度ご参加ください。
ミニ展のご案内は私どものホームページで随時ご案内いたしております。ぜひ、ご覧ください。

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