Vol.29
グッドデザイン賞への思い

ダーウィンの進化論の一説に「生物の進化の過程の中で、生き残っていったのは最強の生物ではない。環境の変化に対して順応していた生物だけが生き残った」なかなか意味深い言葉です。

グッドデザイン賞への思い

私共が製造しているオーブンは、果たして業界やお客様の環境の変化に対して順応しているだろうか。今迄の厨房の機械は、生産することだけを中心に考えられていました。これは当然なことです。しかし、その考えのままでは、オーブンの概念は何も変わらないし、そこからの新しい市場の創造は生まれません。
私の頭の中には、漠然とではありますが、一つの「思い」がありました「グッドデザイン賞」を取れるようなオーブンメーカーになりたい。グッドデザイン賞とは、最新のジェット機や最新型のエコカーやエコ住宅。また、新幹線の最新型の車両など、日本中でデザインされた、ありとあらゆる製品の中から、特にデザイン性や時代性を持った、優れた製品に対して贈られる賞です。国内はもとより世界的にも、とても権威のある賞です。

逆転の発想

オーブンの裏側、これほど役に立たない死に場所はないと思います。そこを最大の見せ場にしたい、グッドデザインを取る為のコンセプトは、まさに逆転の発想でありました。お客様の嗜好は、作り手の姿や、商品が出来上がる姿を求め「五感」により商品を選び、買い求める商品は、何処で誰が作ったのかを明確にすることが、時代の要求でもありました。しかし、オーブンをスルーにするという事は、オーブンを密閉するという観点からは相反することがあり、非常に難しい炉内のつくりが要求されます。何度も試行錯誤を繰り返し、設計や製造のスタッフは、従来のオーブンよりも何倍も手間の掛かる作業を、夜遅くまで何日も続けました。その結果、我社初めての2006年のグッドデザイン賞を受賞いたしました。しかし、受賞はしましたが、デザイン性を重要視した為、コスト的や扉の重さなどの課題が残りまた。そこで問題点の改善と更に製品を磨きこみ2007年も連続受賞することができました。この時点でスルータイプのグッドデザインに対する挑戦は完了したと思いました。
「思い」の強さは、ここからが分かれ道になると思います。我々はまだ追求できるという道を選び、更なるスルーオーブンを作り上げるという一念で、2年間研究開発を行い、スルーオーブンエボタイプを完成させました。エボとは(エボリューション=進化)略語です。今年の2010年のグッドデザインに出品いたしました。スルーオーブンエボタイプは、製品の軽量化やコストダウンを更に試み、デザイン的には究極のところまで磨きこみました。又、安全性も重視いたしました。
そして、奇跡がおきました。今年度のグッドデザイン賞の中から特別賞として中小企業庁長官賞を受賞いたしました。努力して受賞したのですから奇跡という言葉は不適切かもしれませんが、10年前から漠然と、グッドデザインを取りたいと思い描いていたときからすると、今回の受賞はまさに奇跡であると言っても過言ではないような気がいたします。

10年カレンダー

目標を持つことは大切なことです。そして、それを実現させるための「思い」を強く持ち続けることが大切だと思います。目標の実現と「思い」の継続は、何でもいいから、これを書き表すことが、夢を実現するための第一歩だと思います。
栃木県那須に有ります、株式会社庫やの手塚社長から、10年カレンダー計画表を見せてもらいました。縦8cm 横60cmの紙1枚に10年間のカレンダーが書き込まれていました。一目で見ることができる10年間、私は深く感動いたしました。そして、その中に色々な目標や思いを書き込むことにより、10年間の、いや、人生の道しるべになるような気がいたしました。
いよいよ、12月を迎え今から最高の商戦を迎えます。くれぐれも体調管理にはご注意してください。皆様方のご健闘をお祈りいたします。

博多へ向う新幹線の車内より

(このブログはNANBANプレス42号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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