Vol.26
不況の時こそ店を磨き込むチャンス

世の中は異常な不況の風が吹いてはおります。そういった中、昨年も沢山の専門店を、精力的に回りました。しかし全国を回ってみると、繁盛店は相変わらず元気が良いことに気づきます。世の中の大不況に比べると、菓子店は思ったほど悪い店は少なく、不況の風に巻き込まれるお店もありますが、売れない店は世の中の景気だけではなく、自分のお店の方法手段に問題があり、景気や材料の値上がり等も関係があるかも知れませんが、オーナーの考え方ひとつで、改善の余地はいくらでもあると思います。
物事の見方を変えてみると、専門店にとって一番の台風は、近くに競合店が出来ることで、これが最大のピンチになる要素かも知れません。
しかし、この不況下やバター不足で、このような時期に独立する人や、出店するお店は一時期と比較してみると10分の1くらいに減っていると言っても過言ではありません。
もっと言えばこの時期こそ、本来の自分の店を磨きこむチャンスである、
これくらいの気持ちになって頂ければと思います。
いつの時代でも、人間には「憩い」が必要です。景気の良い時は、「憩い」は外国の旅行であったり、高級品を買ったりそういったことが「憩い」になっていたと思います。しかし、今の時代は贅沢なことは我慢して、家族団欒で「憩い」を作り出す時代であると思います。シュークリームやお饅頭、クッキーなどは、そういった家族の団欒を作ることのお役に立てる大切なアイテムである。こういったことを提案する、発想の転換が必要だと思います。「チャンスはピンチの顔をしてやってくる」といった言葉がありますが、まさにオーナーの方々の気持ちの切り替えが大切です。

売れなくなる原因は

よくこんな話を聞きます、客数が大切か?客単価が大切か?勿論どちらも大切ではありますが、考え方として客単価は客数が多ければ改善することは可能ですが、客数はその店の持っている、お客様人気度のバロメーターであることは間違いありません。一度減りだした客数を回復するためには、かなりの努力が必要になってきます。
新聞にどの業種も対前年比売上げを落としているのに、コンビニの売上げが前年比8.1%UPしたという記事がありました。その原因はタスポ(たばこ自動販売機の成人識別カード)導入により、たばこをコンビニで買う人が増え、そのついでに弁当などを購入するお客が増えているとのことです。ようするに集客さえできていれば、いくらでも可能性があるということで、「集客とは何か」このことを再度考えることが大切だと思います。

菓子だけではないこと

私はよく長い出張に出ます、ホテルの狭い部屋に帰り夕食をとる。家族の笑顔や会話があるわけではなく、一抹の寂しさを感じながらホテルの中のレストランに入る、そんな寂しい気持ちの私に、店員のおばちゃんが「お帰りなさい」と声をかけて笑顔で迎えてくれました。思いがけないサプライズな言葉に喜びを感じました。それ以来、私はいつもこのホテルに泊まり、このおばちゃんの「お帰りなさい」を聞くのが楽しみです。
美味しいお菓子を食べて頂くことは大切ですが、もう一つ入り込んで、あの店のあの店員に会いたい、あの職人が作ったケーキを食べたい、こういった気持を抱いて頂く工夫、もう一歩お客様の気持ちの中に入り込んでいく努力をすることも大切な集客ではないでしょうか。

(このブログはNANBANプレス38号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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