Vol.32
原石の時代

目指していたものは一流の経営者、あの人の生き方や商品を研究して、そこを目指し階段を上がっていけば、売上げは上がっていきました。まさに繁盛には、ある程度のパターンがあることは事実だと思います。しかしここにきて、その考え方だけでは通用しなくなってきた、このことを強く感じているかたが多いのではないでしょうか。超繁盛店のオーナーは、まさに成功するエキスを作りだすことができる人だと思います。私はこのよう方を「原石」と呼びます。今の時代成功するためには、「原石」の人たちがたどった道を追うことではなく、一人一人のオーナーが原石になる努力をすることではないでしょうか。
何故なら、お店のあり方はその時々の時代性を表現することが大切だからです。
富山県の高岡市に、私が30年来のお付き合いをしている弊社の代理店有限会社高岡商会様があります。高岡市の人口は約17万人、立山連峰の美味しい水とその気候の中で育った美味しいお米、それによって出来る美味しいお酒、そして富山湾の強い流れの中で育つ魚は身が締まって味がよく、この時期に氷見湾でとれる寒ブリは絶品です。全国を歩く中で大好きな町の一つです。
高岡商会様は、お母様が社長をされている時代からのお付き合いで、現社長は2代目になられます。私よりも年はお若いですが、非常に知識が豊富で、お菓子に対しても造詣が深く、お会いするたびに勉強になります。お母様も、奥様もお元気で、久しぶりにお伺いして昔話に花が咲きました。その後社長とご一緒に高岡の一番店中尾清月堂様にお伺いいたしました。

中尾清月堂

高岡市に創業141年の和菓子店の老舗中尾清月堂様があります。現社長の中尾吉成様は5代目になられます。昔から懇意にして頂いている会長様は81歳になられ、まだまだお元気です。私が話す今の時代の状況を、大変興味深くお聞きになる姿や、新しいことをすぐ実行される、会長と社長のコンビネーションの良さ、そして今では、会長のお孫様もご一緒に働かれて、まさに親子三代がご一緒に現役としてやられている素晴らしいお店です。
中尾清月堂様は和菓子専門店ですが、洋菓子店が持っているおやつ菓子に早くから着眼されました。ギフト性の高い和菓子ギフトを売るためには、集客性の高い洋菓子のおやつ菓子を取り入れる。私の知る限りでは、和菓子専門店の中で一番最初に、焼き立てシュークリームのコーナーをお店の中に作られたと思います。店内に入りますと南蛮窯が置いてあり「和菓子屋のシュークリーム」という看板が目に入ります。シューの名前は「10時くんと3時ちゃん」といい、この時間に焼き立てが出来上がるという案内がされています。このおやつ菓子の集客力はギフト性の高い和菓子店にとっては、非常に大きな効果をもたらしたそうです。和菓子の暖簾を守る為に、時代を取り入れる感性と柔軟性そして実行力を感じました。
会長に案内され、今回新しく新設された工場を案内していただきました。和菓子の命であります、餡子を作るプラントやラインは凄い設備で、素材の管理からお客様のお口に入るまでの、作り手の思いを深く感じました。この美味しい誰も真似できない極上の餡を作り、お客様に食べ続けていただくために、店のあり方(時代性)を常々考え続けておられる姿に、まさしく「生涯現役」この言葉がぴったりと思いました。そして、それを受け継ぐべく現社長の努力を強く感じました。

原石の時代

私自身の思う、業界の原石という方と会話をしている中で強く感じることは、一つの道を究めていく求道者的姿です。「求道者」の意味は、あることを極めるために、他のことをすべて犠牲にして省みない人のことだと思います。
味の追及、素材の追及、技術の追及に全身全霊で打ち込み、終わる事のない精進を繰り返す。物づくりは、試行錯誤の連続です。完璧な製品を誰もが目指しますが、後残り5%~10%からの壁に必ずぶつかります。原石を目指すということはこの壁を破り完璧を目指していかれる方々だと思います。
「すべては、お客様の笑顔のために」この思いを一生を通じて追及し続ける事ではないでしょうか。
今年も頑張ります。よろしくお願い申し上げます。

東京へ向かう新幹線の車内にて

(このブログはNANBANプレス45号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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