Vol.18
店の中に店を作る

全国を歩いていると、最近特に大型量販店が全国に凄い勢いで出来ています。この様な大型の集合店がまさにお互いに潰すか潰されるかの戦いをやっている中で、その地域の商店街はとても大きな打撃を受け、薬屋、八百屋、魚屋、といった屋のつく商売はこの大型量販店に完全に飲み込まれてしまっているのが現状かもしれません。その屋のつく商売である菓子屋さんにとってはまさに大きな風が吹いております。
しかし、菓子を作って売ることは小さいながらもメーカーであり、そこに他の商売とは異なる独創性を作り出す事ができるといえます。私は今から生き残って行くお店は、やはりそこの店にしかないオンリーワンを持っているお店ではないかと思います。

店の中に店を作る

福岡のチョコレートショップの佐野社長との出会いは今から5年前でした。フランス菓子16区の三嶋社長のご紹介でお会いしました。お店は福岡市内の裏通りの狭い交差点の中にあり、駐車場がなくお店が12坪、併設した6坪の喫茶があり合計18坪のお店でした。店の売上げは年商7千万円そのうちケーキとショコラの売上が4千万円、喫茶の売上が3千万という比率でした。
佐野社長とお話をしていく中で、佐野社長のお父様から引き継いだチョコレートへの並々ならぬ思いや、焼き菓子を売れるようにしなければいけない事、日々の集客を増やす事がテーマであることが分かってきました。私は佐野社長に一つの提案を致しました。「喫茶を辞めましょう。そしてそこにチョコレート専門店を作りましょう。」一瞬、佐野社長は私をにらむように見つめられました。それは当然の事です。店の売上の半分近くをあげている喫茶です。しかしチョコレートショップの将来を考えていくうえで喫茶を辞める事が一番良いと言う結論を出されました。まさにあの時の決断は佐野社長の英断だったと思います。

店のレイアウトとしては、お店の玄関から入った所にバッケンヨーロピアンを置き焼きたて五感ゾーンを作り、玄関先商品ゾーン、アントルメと小物ケーキのエレガントゾーンとその後ろに焼き菓子ギフトゾーン、そして喫茶のあった場所に、「店の中の店」チョコレート専門店ゾーン、18坪の店内ですが、まさに明確に商品のそれぞれの個性を分かりやすく表現されました。エレガントとはアントルメと華やかな小物ケーキ+カジュアリティーとは焼き立て感と生の玄関先商品+スペシャリティーとはショコラ。この3本のラインを明確に打ち出しながら、そしてなんと言っても佐野スペシャル、お客様へのおもてなしと言う素晴らしいエッセンスの構築を佐野社長はなさいました。私たちの業界に接客の大切さを示してくれた方だと思います。

「店の中に店が出来る」そして店が生まれ変わる瞬間です。あれから5年、店の年商2億9千6百万円まで持っていかれたのはまさに驚異的です。そして今回のプレスに取材記事として載せてあります佐野社長の夢の新店に、その空気はそのまま引き継がれました。

皆さんに質問です。私はお店を回り、よくオーナーの方に御質問する事があります。「あなたのお店の主力商品何ですか?」この質問に明確にお答え頂けるオーナーの方は意外と少ないのが事実です。又お店自体もお客様の立場でよく見ていくと、これを売りたいという明確さを感じる事が出来ない店が多く、お客様が何を買おうかと迷わすならよいのですが、何を買ったらいいのかまどわす店になっている事が問題です。

繁盛店は分かり易い

繁盛店を歩いて行くと売りたい菓子が非常に明確で、この季節はこの商品、そして私の店はこの商品が主力の看板であると言う事が買う側に分かり易く表現してあります。また販売員の対応も店側が売りたいものにお客様が購入したくなる接客をなさいます。売りたいものがお客様に対して分かり易いと言う事は、その商品が売れるということになり、必然的に商品の絞込みが出来ます。作る側にとっては多くの種類を作るより、単品が多く売れた方が生産性は良い訳ですから、全ての事に対して効率がよくなってくるといえます。

今年も我が社の営業マンは私も含め精力的にお店を回ります。お伺いした時にはよろしくお願い致します。今年も頑張ります。

(このブログはNANBANプレス24号に掲載されたコラムです。)

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