東京都板橋区
株式会社 浅野屋(ベイクファクトリー)
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浅野屋は1933年、東京麹町に食料品を扱う浅野商店として創業。やがて政府の要請により軽井沢で避暑を過ごす外国人や旧貴族などのために食料品を調達する軽井沢店を開業するも、パンの需要が年々増してパン製造を本業とするようになる。1980年代に日本で初めてスペイン製の石窯を導入し本格的なベーカリーとして名声を上げた。
内山 2021年夏の生産工場(ベイクファクトリー)のリニューアル移転は、浅野屋様にとってどのような意味をお持ちでしょうか。
村松 パン業界の経営環境はコロナ禍が2年も続き、私どもは駅ナカの店舗を中心に出店しておりますので、人流が減った中で集客には苦戦しました。
さらに小麦粉が去年から値上げされ、今年もたくさんの材料が値上がりしていますので、すごくシビアな運営を迫られています。
そうなってくると価格を値上げするしかないのですが、その前に商品の価値をぐっと上げなくてはお客様にご納得いただけません。〝軽井沢レザン〟など当社ならではの魅力を打ち出している商品は、まずはその価値を十分に高めた上でコストアップした分を価格に転嫁させていただくことが重要です。
一昔前はボリュームがあることがパンの価値だったのですが、最近のお客様は必ずしもボリュームのあるパンがいいという原価目線ではなく、生地のおいしさや香り、形、さらには低カロリーや低糖質などの付加価値もご評価するようになっています。
私たちは、こうしたパンの品質に価値を求めるお客様のご要望に真摯に応えなくてはなりません。東京工場の〝ベイクファクトリー〟としてのリニューアル移転は、個々の商品の価値をさらに上げるという、浅野屋のコロナの次の時代を見据えた戦略があります。
菊池 その戦略に「スチームラックオーブンZEN」はお役に立っていますか。
村松 もちろん、大いに活躍しています。「スチームラックオーブンZEN」の魅力は、我々が慣れ親しんだ固定窯の感覚に近い焼き方ができることです。生地を窯入れした後のパンの窯伸びが固定窯と同じようにとても素直で、そこが使い勝手のいいところです。 私どもの看板商品の〝軽井沢レザン〟は大型に焼くパンなのですが、生地の力加減というか伸展性をちょっとミスするだけで破裂するようなことがあり持て余すことがありましたが、「スチームラックオーブンZEN」の自然な窯伸びのおかげで不要な破裂がなくなりコントロールしやすくなっています。
また、加圧蒸気を使うことによって中のクラムがとてもしっとりして、サクサクとした外側の生地との組み合わせにコントラストが生まれて我々の欲しい特徴を出した製造ができるようになりました。 パンの老化も遅くなって、翌日でもしっとりふわふわしていて、以前にも増して商品の価値が大きく上がったと思います。
内山 その他にはどのようなパンをお焼きでしょうか。
村松 食パン、角食にも使っていますし、ベーグルからクロワッサン、ロールパンなどにもオールラウンドに使っています。
ここベイクファクトリーに移って我々の生産が落ち着いてまもなくしてからなのですが、お客様から「クロワッサンが美味しくなりましたね。」というお声をいただきました。
実は今までクロワッサンがおいしいというコメントをいただいたことはなかったのです。わずかな声ではありますけれどもすごく嬉しくて、「スチームラックオーブンZEN」を入れて焼き上げて良かったなと思いました。
「スチームラックオーブンZEN」の機密性の良さに由来するものだと思うのですが、焼けたバターの香りがパンにすごく残ります。
焼き色も見事なのですが、これまでと明らかに違うところはバターの香りがすごくパンに閉じこもっていて、食べた時にバターの焼けた香ばしさが強調されています。
私どもがコロナの次の時代に向けて動き出した戦略が、お客様へちゃんと伝わるのだなと素直に感動しました。
菊池 今後の展望をお聞かせいただけますか。
村松 新しい工場も建ち生産体制も整いましたし、七洋さんの新しいオーブンという武器も手に入れましたので、今までの商品の価値を上げることはもちろん、今までとは違う新しい食感のパンや新しい魅力のある商品をお客様に届けたいと思っています。
従業員も一生懸命働いてくれますから、私どもの企業としての存在価値に皆で誇りを持って笑顔で働けるような環境づくりをしていきたいと思います。
内山 わかりました。これからの「スチームラックオーブンZEN」を使った浅野屋様の新たな展開に注目いたしております。
取材後記
取材
七洋製作所 営業次長
内山 聖仁
七洋製作所 テクニカルチーム
菊池 浩輔