
京都府福知山市
仏蘭西焼菓子調進所 足立音衛門
電話 0773-24-2043
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「栗のテリーヌ・天」 1 本10,500円。
シリアルナンバー入り!
- 店内に多くのお客様が!
インターネット等でパウンドケーキが有名な足立音衛門様が、昨年10月に創業地の福知山市に「本店」をオープンされました。様々な思いを込めて立ち上げられた「本店」を中心に、”こだわりの追求”について伺いました。
竹内 「栗のテリーヌ・天」というパウンドケーキにはびっくりしました! 価格が1本10,500円(!)ですね!!
足立 この商品にはこだわりがあります。私は25歳の時に佃煮の卸しの商売を始めました。その後地元特産の栗に着目し、売上を増やすため9年後の34歳の時に栗を使ったパウンドケーキを独学で作り販売。どうせやるなら周りがやらない事をやろうと品質にこだわってパウンドケーキ1本に栗を200g入れて作りましたがなかなか売れない。インターネット販売も試みましたが厳しい経営が続き、しかし我慢して売り続けた今から8年前にインターネットサイトで和三盆と栗200gのパウンドケーキを紹介して頂きようやくヒット。現在の基礎が出来ました。その後は菓子屋にシフトしパウンドケーキの品質を磨き上げ、フランス産ラヴィエット発酵バター、A級丹波栗、粉や卵はそれぞれ最高品を直接仕入れてふんだんに使い仕上げたのが「栗のテリーヌ・天」です。値段はどうしても張りますがそれだけの素材と手間をかけており、お陰様でお客様からご指名を頂く商品に育ちました。
竹内 試食で頂いた瞬間、純粋に「美味い!」と思いました。他にも特徴のある商品が多いですね。
足立 商品それぞれのコンセプトは、「こんなものは売れないだろうけど、自分としてはあるとうれしい」という事。「大人の贅沢プリン」もジャージー牛乳や和三盆糖にこだわり濃い目に仕上げています。パウンドを中心とした他の商品においても同様で一つ一つに手が抜けないので、少品種しか生産出来ないのです。
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店内入り口にバッケンF24T と
オープンキッチン
- 「金のどーなつ・銀のどーなつ」1個380円。
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「集栗夢」「おとなだけの半熟贅沢プリン」が
並ぶショーケース
竹内 この度の「福知山・本店」につきまして、その経緯をお教え頂けますでしょうか?
足立 元々福知山の本社工房脇に直売店を置いてましたが、その後インターネットが主流になり、5年前より東京・大阪で百貨店に出店。当初はそれほど売れるとは思っておりませんでしたが思いのほか「こだわり」が受け入れられ、百貨店の売上が順調に伸びました。そのなかで”本拠地で買ってみたい”との声が多く寄せられたのと、地元のお客様に喜んで頂く責任を感じ、地元に拠点店舗を設ける構想を立ち上げた次第です。その考えで物件を探していたところ、福知山市内の敷地面積900坪の文化財物件の一部を使用出来る話を頂いたので、地元還元の思いも込めて「本店」作りをスタートさせました。
竹内 「本店」に求めたコンセプトをお教え下さい。
足立 明治時代の物件ですが最小限の手直しに留め、この地域財産へ多くの方にお越し頂く事を第一に考えました。その上で、”値段を崩さない・頑張って売らない店”を目指しました。売りたくないのではなく、商品の個々を分かりやすく見せる店作り、すなわちお店や商品をご存知の方のみゆっくり楽しんで頂ける店作りを目指したのです。ただ、地元に喜ばれる店にするにはデイリー商品が必要。そこで七洋さんのアプローチで焼きドーナツ・シュークリームを取り入れました。本社工房では既にバッケンで焼いていますが外からは見えません。そこで本店入口にバッケンF 24を中心とした厨房を設け、焼立てのシズル感・鮮度感を出す。しかも、食べて懐かしさ、子供への安心感を提供する。クオリティも私共にしか出来ない”おやつ”に仕上げました。また、本店オリジナル商品も限定販売。インターネットや百貨店ではギフトは提案できますがデイリーは難しい。また、ネットはいかにコストカットで商売するかですが、百貨店で認知される中で接客の重要性を確認。拠点店舗の重要性を感じた次第です。
竹内 2010年10月23日にグランドオープンをされました。その後状況はいかがでしょうか?
足立 無事にオープンを迎える事が出来ました。特に折込み等は行わず、地元新聞とネット上に告知した程度でイベントも行いませんでしたが、300円の「集栗夢」(シュークリーム)が300個夕方を待たずに完売!
また380円「金・銀のどーなつ」や500円「半熟贅沢プリン」も思いのほか動いております。先にも述べましたが、”売らない店”のコンセプトで11月の本店の月商は700万をクリアしました。やはり自らの「らしさを出す」のは非常に大切に感じております。
竹内 今後についてお考えがございますか?
足立 苦しい時を経験しているので危機感は常に持っています。お店は毎日でも少しずつ変えて行きたい。それは商品も含めてです。お菓子はお客様が召し上がって頂いてこそ初めてゴールです。また、パティシエの仕事はお客様に喜んで頂く事がゴールなのです。福岡の百貨店にも出店致しましたが、今後は出店もですが内部強化に重点を入れていきます。つまり、”変わらないふりをして変えていく”菓子屋を推し進めていきます。
取材後記
足立音衛門様は、常識にとらわれず独自性を貫いているお店だと感じました。結果として多くのお客様に支持を受けておられます。私自身出会いをさせて頂いて大変嬉しく思いましたし、これからも展開に注目していきます。

取材
(株)七洋製作所 営業次長
竹内 浩