埼玉県さいたま市浦和区常盤
アカシエ
電話 048-829-7570
今回は、2018年10月11日にオープンした「アカシエ 北浦和本店」にうかがいしました。
浦和店と北浦和本店について
興野 2007年、売場8坪/製造9坪の浦和店から開業。さらに2010年には売場・イートイン15坪/製造13坪のサロンを開店しました。製造面積は合計22坪ですが、離れた場所でもあり、決して広いとは言えませんでした。そこから7年が経過し、北浦和本店をオープンしました。
1Fが70坪(売り場30/イートイン15/バック25)、2F・3Fが70坪と60坪で、製造やストックヤード、事務所等となっています。
ネガティブを追い風にする
興野 僕は、人生の大半はネガティブだと思っています。
でも受け止め方次第でいかようにも変われるのです。経営者はネガティブを追い風にしなければならない、柔道の受け身のように、と考えています。
開業前、不安と自信が入り混じる中、満員電車に乗っている時に考えたことがあります。満員電車は超満員だと1両220人くらい乗れます。それが10両編成で2200人。その2200人が5分おきに来るのですから、一体何人いるのかと(笑)。菓子店に来てほしい人数は100~300人くらい。つまり、この満員電車1両分の人をお店に呼べばいい!これだけ人がいるのだから(笑)。そう思うと元気が出てきたのです!(笑)
受け取り方は人それぞれです。
従業員のモチベーション
興野 例えば、経営者は1日100万円売れたらうれしい。でもスタッフは、「疲れた、嫌だ。」と感じてしまう。うちではきっちり、残業代を出しています。しかし、残業代より時間を重要視している若者が多いのも事実です。でも、「時間」=「技術」なんです。だから正直、凄くむずかしい…。
ケーキを買い求める人たちがいる限り、作り手は必要なのです。働き方改革のなかでも、企業の教育や世界観で、情熱をもった作り手を育てるために、この規模の店舗をつくりました。
機械化にも限界はありますから、手作業の良さを推し進めていきたい。理論的ではなく、情熱をもって…。
私たちには、作る喜びがありますから。
人との繋がりを楽しむ
興野 僕がフランスへ行くきっかけは、修行はもちろんですが、日本で生まれ日本だけしか知らないまま死んでいくのが嫌だったからです。
世界観を共有できる同志がいることで、点ではなく、面で仕事をする。
生産者に会ったり、人脈を広げたり、世界観が広がって、人と繋がるのが楽しいのです。自分が豊かになれるヒントがたくさん転がっています。
楽しいこと、良いことや良いものに触れ、そこからお店のヒントへと繋がっていきます。
素材にこだわるクリスマス
興野 毎年クリスマスは、イチゴショートを含めて5種類出します。
毎年テーマを決めていますが、今年は「ジャポニスム」。日本人の感覚の自分がフランス菓子に、どのような和素材を加えるか。
ケーキの素材はさくら、日本酒、酒かす、愛媛産のみかん・くり・お茶などを使ってみたり、パンフレットの背景を東海道五十三次の浮世絵にしてみたりし、世界観を作りました。テーマを掲げることでそれまで圧倒的にショートケーキだった流れも素材にこだわったケーキに移行するようになりました。去年、予約開始当日には、200人以上のお客様が訪れてくださいました。
スチームラックZEN導入
興野 ZENを初めてみたのは、3年前のモバックショウでした。プリンを試食して、滑らかさと口どけに驚きました。今まで平窯でしか焼けないと考えていたプリンやジェノワーズが衝撃的な焼き上がりをしていました。
人手不足・クオリティの維持・働き方改革の三重苦の中、対局にある「効率」と「ハイクオリティ」を実現しているスチームラックZENは、入れるしか選択肢はありませんよね。
ZENは、火通り・ボリュームなど、とても良い塩梅で上げてくれます。
他にも平窯2枚差し3段・コンベクション5枚差し2段があるのですが、ZENは「平窯」と「コンベクション」の良さを両方兼ね備えているため、一番稼働しています。
色んな方が見学に来られますが、みなさんZENの前で「入れようと思っているんだけど、どう?」と、聞かれます。
機械はビジネスパートナーです。今まで平窯でしか焼けなかった、マドレーヌ・フィナンシェ・ケイクはZENで焼成しており、とても助かっています。
焼き菓子は生地を食べるものですから、良いパート(生地)を焼くことこそパティシエの命なのです。
今後の展望
興野 北浦和本店では、オープン時から価格をリーズナブルにして、シュー・ロールをやっていますが、全く売れませんでした。最近、やっと少しずつ売れてくるようになりましたが、それは新規のお客様なのです。新規のお客様の入り口は、ショートケーキなどの定番商品。
だからこそ、フランス菓子を求めて来られる常連のお客様がいらっしゃることを忘れてはならない。
そこがわかったことがすごく面白いし、どんどん新たなことに挑戦していきたいとも思います。
今までとは違う規模のなか、いかにして自分の舵取りとスタッフのスピードを高めていくかということが経営者としての課題です。
取材後記
時代の流れが早い昨今、業界の様々な環境が変化しながら、外部も内部も変わっています。
興野社長に出会い、専門店のひとつの在り方を見ることができました。
自分の店で勝負ができるものをブラッシュアップする。アカシエ様を訪問すると、よくわかります。ぜひ見学に行かれると良いと思います。
アカシエ様の新たな船出を全力で応援させて頂きます。
興野社長・従業員の皆様、お忙しい中、ありがとうございました。
取材
七洋製作所 東京支店
営業次長
高橋 宏之
七洋製作所 東京支店
営業主任
内山 聖仁