身長155cmの女性でも、
踏み台なしで4段のオーブンが、
安全に使えることがテーマでしたね。

大阪府和泉市

菓子工房・T.Yokogawa

オーナーシェフ

横川 哲也 様

大阪府和泉市

菓子工房・T.Yokogawa

電話 0725-50-5580

内山  昨年、私どもの竹内にこれからはもう少し、厨房のあり方を考えるべきではないかと言う意見を頂戴しました。製造スタッフに女性が増えてきて、女性が主体になってきた現状で、お菓子の製造現場は何も変わらない。変わらないのなら、変えないといけないのではないかと。

横川  今、製菓学校では8割、9割が女性です。
もちろんパティシエになりたい女性もいるし、花嫁修業の一つとして製菓学校へ行く女性もいたりします。しかし、目的はいろいろあるにしても、生徒の圧倒的多数が女性であるというこの現状を受け入れてやっていかなくてはなりません。

内山  ちょっと前では考えられませんね。びっくりです。

横川  私も2年前までは男性だけの現場を作っていましたけれど、これからは女性スタッフも入れて行かなくてはならないと思い何度も入るんだけれど、辞めて行く。なぜかな、と考えてみると、狭い工場の中で朝から晩までやっていると、どうしてもメンタルな面に良くない。やる気はあるんだけれど、ストレスに勝てなくて辞めていくケースとても多いのです。だから、工場をもっと作業効率の良いようにしなくてはならないのです。

内山  私どもに、間口15cmのオーブンのお話をいただいたのも、働きやすさの追及だったのですね。

横川  はい。バッケンの4段を否定するわけではないのですが、暮れの繁忙時期に、プリンを焼く女性スタッフが、生クリームのケースの上に乗って4段の一番上に湯煎を入れている姿を見た時に、これでひっくり返ったら大事になると思いました。一番下から生地を出す作業も、腰を痛めてしまうと思いました。これは何とかしなくてはと。

そうしたら、みんな当たり前のように思っているようだけれども、「なぜオーブンの間口は21cm必要なのか。」と急に気になり出しました。クッキーは厚さ5mmから1cmくらいです。それを焼くのに21cm必要なのか?スポンジも高さがあっても5cmくらいです。5cmのものを焼くために21cmが必要なのか?そこで、これは科学的根拠があるのですかと、七洋さんにおうかがいしたわけです。ヨーロッパには間口の狭いオーブンもありますよと。もし、狭めてもちゃんと焼成できたら、今までの4段よりももっと作業効率のいいオーブンができるはずだと思いました。

内山  私どもも、お話をいただいた時は、半信半疑でした。しかし、横川シェフのスタッフを思うお話をうかがい、「何とかしなくては!」と燃えましたね。 身長155cmの女性を基本テーマに考えて欲しい。身長155cmの女性でも、踏み台なしで、ちょっと背伸びしたら4段の一番上が見えるようにして欲しいということでしたね。

横川  はい。そうすれば腰の負担が軽くなる。そして、何よりも安全です。

内山  そして、最終的に2枚差し4段を選ばれました。これはどうしてでしょう。

横川  手の火傷、これは職人の勲章だとわれわれの時代では言われて来ました。しかし、女のスタッフの腕に黒い火傷のあざがたくさんあるのを見た時、この子達は親子さんから預かっているのだ。夜も遅いし、消えないようなあざが腕にいっぱいついているしでは、いったいどういう仕事なのかと言われてもしょうがない。やっている本人はわかっているから、これくらい仕方ないと思っていても、回りが心配します。それにあの火傷はなかなか消えない。私も、20年経ってやっと若い頃の火傷がなくなってきたけれど、特に女性の場合はかわいそうだと思います。そこで、2枚差しなら手を奥に入れる必要がないから、火傷の可能性が減る。それで、2枚差しに決めたのです。

内山  私も、横川シェフのご期待に応えられるだろうかと心配でした。しかし、私どもは上火のコントロールが繊細にできる技術を持っていますから、うまく行くんじゃないかと信じていました。横川シェフの所へ導入させていただいて、「上等だ。」「よくできている。」とおっしゃっていただいて、ぐっと来ました。

横川  100%の理想を追求するよりも、厨房環境を整えることを優先するから、焼成については自分のイメージの30%は妥協しよう、70%くらいのものが出来て来たらいいと思っていました。しかし、なかなか出来て来なかったから、いらいらいらいらしていました。それが、実際に導入してもらったら、150%の出来でしたから、すぐに内山社長にお礼の電話をしたのです。予想以上だった。

内山  火が近くなることについて、21cm間口のバッケンも使って頂いて、火の粗さはどうでしょうか。

横川  私のレベルでは全く問題ありませんね。かえってシューも上がりがいい、今までのバッケンよりも、カリッとしています。スポンジなども全く問題ありません。

内山  ありがとうございます。それからこんなおまけも付いてきました。間口を15cmにすると電気は16キロでよくなったのです。普通でしたら20キロ必要なのです。ですから、ランニングコストも軽減できるのです。

横川  もう、21cmの根拠はないと思います。マイナスの要素はまったくなく、電気量の軽減や女性が使いやすいなどかえってプラスになることばかりです。今後、15cm間口のバッケンをそれぞれのパティシエの方々がどう評価するかですけれど、少なくとも私にとっては希望通りに進化したと言えますね。

内山  ありがとうございます。これからも新しいお菓子業界のために、私どもの技術が活かせるよう努力いたします。今日はありがとうございました。

材後記

(株)七洋製作所  代表取締役社長
内山 素行

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