Vol.52
先見性

先見性

修業と仕事、この狭間に惑わされる、専門店の方々の戸惑いは非常に難しい問題であると思います。本来、修業とは技術を習得するために努力して学ぶことの意味であり、そこには労働時間や仕事のきつさなど超越して、技術を体得するために行う道と考えておりました。そしてその修業を皆様方は当たり前としてやってこられました。
しかし、時代が変わりこの修業という言葉が通用しにくい時代であります。そんな中で勤怠管理の方法、又パートアルバイトの方々の使い方など考え方を変えていかなければなりません。
私は経営とは先見性(先を見る力)これに尽きると思います。会社の舵をとる中で、世の中の動きから逸脱していけば、おのずと道は閉ざされていくものであると思います。その考えでこの業界を考えてみますと、間違いなく少子高齢化(世界で2番目に高い国)であるという現実と人口の減少はどうしようもない事実であるということです。お菓子を作る人が減少する中で、何が必要であるかだと考えております。

オーブンメーカーとしての立場で先見性を考えてみます

テーマは「誰もが技術を持った職人のように焼成ができる」オーブンを作り上げる事であると考えてまいりました。その中では固定オーブンの場合上火と下火があり、焼き物は基本的には上火温度が高く下火は低いとされております。昔のトランス式(電圧の上げ下げを職人が自分で管理しながら温度調整)のオーブンから自動温度調整付きのオーブンの出現により、オーブンの難しさは画期的に進歩して使いやすくなりました。しかし、今日来たパートの方がすぐに焼成の現場に立つことを考えたとき、自動温度調整だけではできない現実がありました。何故なら上火200℃下火150℃とセットして空焚きを1時間したら上火の熱で下火は自動温度調整では管理できず、190℃くらいまで上がっていく、これは物理の原理でどうしようもないことです。大阪に在ります「りくろーおじさん」様とチーズケーキを焼成する過程に起こるこの難問を、弊社とともに解決するべく取り組みました。約14年間の共同研究のすえ今回取材で記載されておりますスーパーバッケンが完成いたしました。要するに上火200℃下火150℃で何も商品を入れず2時間以上空焚きしても下火の150℃が上昇しないオーブンを作ることに成功いたしました。
又、現状のバッケンや南蛮窯をご使用のお客様にもこのシステムと30%の火力アップにより、更なる焼成時間の短縮を行うことや、連続焼成を行っても究極の下火の色付けを可能にできたと高評価を得ることが出来ました。今回のプレスに記載しております取材記事を是非お読みください。

工程人件費をいかに削減できるか(製品製造の仕込みにかかる時間と人員の削減)

弊社は21年前からシューの冷凍生地を製造販売しております。それは当時から人手不足であった菓子業界に少しでもお役に立てばという一心で始めました。また専門店の皆様が限りなく手作りの菓子を作りたいという思いを表現すために、弊社冷凍生地の工場は専門店がそのまま大きくなった工場になっており、パイは練りパイではなく折パイです。パイ生地製造に一週間のこと細やかな工程を踏まえながら26台のパイローラーを使用して、素晴らしい層ができるパイ生地作りを目指しております。スポンジも何十万台も焼成しておりますが、丁寧に1台1台バッケンで焼成しております。正に人海戦術であります。しかしこの言葉は今どき流行りませんが、この言葉の裏側には今日来た素人の人でも、即戦力として使うことができる仕組みを行っているということです。
大掛かりな機械化ではなく、専門店が許せる範囲内の品質を持つ菓子を作り、専門店の方が安心してご使用できる冷凍生地やO E Mを製造いたしております。
ある菓子専門店のお客様に日頃はお見せしない弊社菓子工場の見学をされた際、非常に感動され厨房の合理化の参考になったと大変喜んでいただきました。
そこで今年度は本来お見せしない弊社食品工場を専門店の皆様に限り、見学をして頂く見学視察会を開催いたします。是非今後の厨房づくりや商品づくりの参考になればと考えております。
今年度も菓子店の方々が永遠と繁盛し続け、後継者の方々が安心して経営できるために何ができるかをテーマに精進してまいります。

皆様方の健闘を祈ります。本年も宜しくお願い申し上げます。
東京に向かう機内にて

(このブログはNANBANプレス67号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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