Vol.54
「作りたてに勝るものなし」

「作りたてに勝るものなし」

株式会社たねや様の会長山本徳次様がお亡くなりになられました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
私が故山本会長と初めてお会いしたのは今から27年前の雑誌の取材で対談させていただきました。その印象があまりに衝撃的で鮮明に残っております。
山本「葛切リという菓子がありますね。あの菓子が一番美味しいのはどのタイミングだと思いますか?実は一番うまいのは葛切りの出来立てを包丁で細くところ天状に切り、黒蜜をかけて食べることが一番美味しさを感じる瞬間です。その一番うまい出来立てを最初に食べられるのはそれを作った職人なんです。そこをどうしたら職人と同じ様にお客様に食べていただけるか、このことに試行錯誤を繰り返しました。長方形の容器を作りそれに素材を注入して、ところ天状になるように出口を網目にしました。お客様が食べる時にご自身で突き棒でところ天のように突いていただき黒蜜をかける、これをパッケージ化して販売しました。これはとても高評価をいただきました。今後はいかにお客様に鮮度を感じて食べていただくかだと思います。」いとも簡単に故山本会長は話されましたが、27年前にこの様な考えを実行されていることに物事の考えの深さと洞察力を感じずにはいられません。全ての商品づくリはお客様側に立って考え抜くことこそが重要であると感じます。

鮮度の演出

食べ物にとって製品の鮮度は最も重要なことですが、出来立て感をお客様が感じることが必要なことだと思います。そして、ここに専門店が生き残る大きな術があると思います。大手量販店ができないことを考え抜いてみると店主がお客様に挨拶をすることは専門店だからこそできる鮮度と信頼の演出であることは間違いありません。実践されてみては如何でしょうか。

南蛮粉

私は南蛮窯をトラックに載せてカステラを焼成することで南蛮窯を広めていきました。南蛮窯はカステラを焼成する工程をタイマーで記憶させ、泡切のタイミングや灰鉄板を乗せる頃合いを教えてくれるシステムでした。しかし、最近では急激な人手不足により、泡切や灰鉄板を乗せる作業に手間がかかる為、カステラは焼いていないというお客様が増えたことに大変危惧をしておリました。何故ならカステラほど素晴らしい焼き物はなく、沢山ある焼き子の中でも、大きなジャンルであることは事実ですし、世界中の焼き菓子の中でも、焼成の難易度が高く、何もナッペせずスポンジだけを食べさせるその奥深さは、まさに日本を代表する焼き菓子だと思います。そこで、弊社のテクニカルスタッフが総力を挙げてカステラの粉の開発を考えていきました。
それがカステラミックス粉「南蛮粉」です。泡切も灰鉄板もかぶせる必要はありません。ミキシング後スチームラックオーブンZENに入れたままで焼き上げます。
今年のモバックショウやフーマでお披露目いたしましたが、とても大きな反響を得ることが出来ました。先ほどの鮮度の演出という言葉があリましたが、弊社がお客様に対して続けていかなければいけないことは、人手不足の中でもお客様がどうしたら菓子を作り続けていくことができるか、それにはオーブンだけの観念にとらわれず、その前段階から考えていくことが重要な課題だと考えておリます。
これは故山本会長から教えていただいたことだと感じております。専門店にとって厳しい環境ではあリますが、ここを切リ抜ければ素晴らしい未来があると信じて皆様方のご健闘をお祈リいたします。

(このブログはNANBANプレス69号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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