Vol.13
「眠れる獅子」
「眠れる獅子」
明けましておめでとうございます。
西暦2000年を迎え、昨年までの難しい時代から新たなるステップを感じつつ闘志を燃やしております。今年もよろしくお願い申し上げます。
昨年11月25日大阪府立体育館で全本学生空手道選手権団体戦が行われ我校は、その大会で準優勝をする事が出来ました。総監督をやっている私にとってこの上ない喜びと、あと少しで日本一に成れたのにと言う悔しさが交差致しました。団体戦は先峰、次峰、中堅、副将、大将の5人制になっており、勝ち数が多い方が勝ちとなります、まさに名実共に大学の総合的な日本一を決める大会です。決勝はこの大会を三連覇した事もある強豪の近畿大学との対戦となりました。両者なかなか譲らず、一つの引き分けをはさみ2対2の全く互角、そこで決勝戦では珍しい代表決定戦となりました、息づまる雰囲気で代表決定が始まりました、実はこの時私は勝利を確信していました、何故なら代表に出た我校の選手は、日本を代表する選手で学生の中では最も強いと評価の高い選手だったからです。しかし勝負とはわからないもの、残念な事に我校の代表が、相手の顔面を強打してしまい、反則負け、勝負に勝ってルールに負けた非常に惜しい試合でした。
私はこの全日本で一人の選手の大きな成長を見る事が出来たんです。選手Sは実力はあるのですが、なかなか試合になると実力が出せない内弁慶的な選手で、私が彼につけたあだ名が「眠れる獅子」というあだ名でした。監督、コーチ陣も彼の実力は分かっているのですが、どうしても試合にだすと実力が出せない選手でした。合宿、練習を通じて何年間も言いつづけてきたのですが、Sにとって成果は現れませんでした。そして、4年生になったSが今回の試合の中のたった2分間で大変革をしたのです。それは、2回戦目の最も恐れていた関東の強豪東洋大学との試合でした。相手のメンバーを考え、最初に機先をとった方が優位にたてると思い、先峰と次峰に我チームの強力メンバーを持っていきました。ところがその思惑は見事にはずれ、二人とも負けてしまいました。もしここで中堅が負ければ2回戦で敗退になります、そしてその大役が「眠れる獅子」ことSに回ってきたのです。私は祈るような気持ちでSを見つめました、しかしSの表情を見た時、嵐の中で閃光を放つ稲妻のような表情になり変身と言うことが本当にあるとするならば、まさにこの言葉どうりのSの表情でした。相手に対して一分の隙も無く攻め込む、まさに完璧な空手でした。もちろん相手を完全に圧倒し勝利を手にしました。この勢いで副将も大将も続けて勝ち3対2で勝つ事が出来ました。それから決勝戦までSの活躍があったからこそ勝ち進んでくる事が出来たと言っても過言ではありません。まさにsが「目覚める獅子」となった瞬間でありました。
人が気づく瞬間というのは、ほんの一瞬かも知れません、本人が聞く耳を持たない時に何度言っても通じない事の方が多いと思います。やはり自分自身が剣が峰に立ったとき、初めて勇気と力が沸いてくるものだとSにつくづく教えられました。私は今菓子の業界を歩いていてまさに感じる事は、どのお店も多かれ少なかれ剣が峰にたっているのではないかと感じます。まさに、勝ち組になるのか負け組になるのか、この中間がなくなってきた時代である事は間違いありません。ここで非常に大切な事は、今の自分の店が置かれている状況把握と世の中のトレンドがどういう方向に向いているのかを冷静に知る事だと思います。何故なら、菓子は空腹を満たすものではなく、精神を満たすものと思うからです。菓子がおいしいのは当たり前の時代、それにプラスアルファーを加える時代だからこそ難しい時代だと思います。しかし糸口はきっとあります。Sの話を読んでもらい、是非大切なこの時期、勇気と力をふりしぼり目覚める獅子となろうではありませんか。
S君がこの体験を通して実社会での勝利者になることを祈っております。



