Vol.50
「コロナの次に来る世界」

私は約8000件の個人の洋菓子、和菓子、パン屋さんを自分の足で回りました。その過程の中で感じた「繁盛にはパターンがある」という事を当時エッセイで書いたことがあります。 お店を回る中で気づいたことは、洋菓子店の場合、超繁盛店と普通の洋菓子店は商品の売上比率が異なることです。洋菓子店はケーキ屋さんと言われているように生ケーキの販売が中心です。一般的に生と焼き菓子の比率が9対1から8対2のように圧倒的に生のケーキの比率が大きいのが従来の考え方でありました。ところが超繁盛店といわれる洋菓子店は全く逆で3対7から5対5くらいの比率で焼き菓子の売上が高いお店ばかりでした。確かにそれは理にかなっていて、焼き菓子は計画生産ができる、遠方に送ることが出来る、高単価であるわけです。そこから、私は焼き菓子はどの様にしたら売れるようになるのかを絶えず考えながらお店を回りました。

集客こそ最重要

焼き菓子を売るといってもお客様が来店してくれないと売りようがありません。集客とは何かと考えていったときに、玄関先商品の充実という結論になりました。玄関先商品とは洋菓子の定番であります、シュー、プリン、ロールケーキ、この3本柱を充実させ磨きこむことによる集客の強化という考え方です。そして集客したお客様に、焼き菓子を買って頂くという仕組みづくりです。しかし、焼き菓子はそう簡単には売れません。そんな中旅先のパリでマルシェ(市場)に行ったとき商品の陳列や見せ方に凄いシズル感を感じました。鶏肉を大きなオーブンで目の前で焼き、油がしたたり香ばしい香り、そして目の前でさばき販売する姿に、このやり方が焼き菓子を販売するには一番適していると直感しました。その思いを胸にオーブンメーカーである弊社が焼き立て菓子を販売する「マルシェ台」を考案しました。このコンセプトはお客様に五感「見る」「香る」「触る」「音」「食感」といった焼き立て感をお店の中で作りだす提案です。今ではお店の中にマルシェを作る提案は一つの業界の形になってきたと思います。

店の中に店を作る

売上げを上げることは簡単です。もう1店舗違う場所に店を出せば売上げは必ず上がります。しかし、それによる人件費、家賃、設備その様なことを考えていくと採算という意味では無理になります。そこで、もう一度自分のお店を見つめなおして頂きました。そうするとお店には必ず死に場所があります。例えば特定の方だけに支持されている喫茶の部分などです。そこに新しいコンセプトのお店を作る提案です。例えばオーブンを置きシュークリーム屋とか、チョコレート屋、焼き菓子屋を出すという考えです。店の中にお店を作るという提案ですから家賃や人の問題も発生しません。そしてその流れの中でスルーオーブンやアートバッケンなどが完成いたしました。お店の中の死に場所が新しいコンセプトのお店になるわけですから、この提案は劇的にお店の売上げを変える大きな起爆剤となり、これをきっかけに繁盛店となられたお店が増えてきたことも事実です。

繁盛店は解りやすい

このお店は、何が売りたいのか、今何が旬なのかがわかるお店は非常に買いやすいお店だと思います。ギフトを育てるという事は一つの商品でも和菓子店がなさっている「季節提案」「中身提案」「食べ方提案」「持ち帰り提案」この四つの提案を表現して育てる事だと思います。しかし逆にお店の中に主義主張がなく製品を並べているだけでは、迷うお店でなく、惑うお店になることに注意しなければいけません。やはりギフトが売れるお店とはオーナーのお菓子に対する主義主張が解りやすくお客様に伝わるお店だと思います。

コロナの次に来る世界

今回のコロナで感じましたのは、菓子を販売している地域の菓子専門店は、飲食のように売上げは落ちてなく、むしろ昨年対比して伸びているお店が沢山あるという事実です。 ただここで線引きがあります。空港、駅、百貨店といった人に差し上げるお土産菓子を販売しているお店の落ち込みは惨憺たるものでした。私は商売というのは軸足を沢山持っていたほうが色々な事態になった時に対応しやすいと考えております。例えばお土産菓子をやられているお店は地域店を作り地域密着型の専門店を持つべきだと思います。又地域密着型の専門店は、その地域、そのお店の特産菓子(お土産菓子)の構築を絶えず考えていくべきだと思います。 何故なら、焼き菓子は計画生産ができる、遠方に送ることが出来る、高単価であるわけです。やはり、銘菓を持っているお店は強い。このことは事実です。

今年のフーマは

人手不足、人件費の高騰、労働時間の短縮と人を雇用することが益々深刻になって参りました。そこで専門店でも実現できる機械化の提案と、冷凍生地製品や半完成製品の商品提案を豊富に作り上げお披露目いたします。是非ご来場お待ちいたしております。

(このブログはNANBANプレス65号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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