Vol.53
ブランドを構築するために

ブランドを構築するために

今年のような真夏の猛暑には、お菓子を食べたいという気にはなかなかなりません。この時期の菓子店の売り上げに差が出るのはギフトが売れるかどうかで、ギフトが売れるお店こそまさしく「ブランド店」と言えるでしょう。どのお店も「ブランド店」になりたいと目指しますが、そう簡単ではありません。
ブランドの構築に王道はありません。コツコツと商品の価値を高め、お客様との信頼関係を丁寧に積み上げて行くしかないのです。私どもの「南蛮窯」や「バッケン」のブランド構築もまだまだ道半ばですが、常にオーブンの新機能を開発して価値を高め、お客様との信頼関係を積み上げてまいりました。こうして「ナンバンプレス」を40年に渡り皆様にお送りして情報の共有を続けてまいりましたのも、常に皆様のお傍でビジネスをさせていただきたいと願う私どもの姿勢です。

ミニ展とデモトラック

さて、今でこそ「南蛮窯」は菓子業界の中で知られるようになりましたが、最初はまったく知名度がありませんでした。オーブンの性能は良いのですが価格が通常の3倍、この常識を大きく飛び越えたような価格の南蛮窯をいかにご購入していただくかが難題でした。
それでも「性能の良ささえ分かっていただければ、必ず売れる。」私は信じていました。そこで全国の製菓機械の卸問屋様の一角をお借りして、そこに「南蛮窯」を運び込み「ミニ講習会」を開きました。カステラの焼き上がりを見ていただきながら、どうしたらカステラが売れるようになるかを一生懸命お話しました。約1時間30分の講習会を朝10時、13時、15時と1日3回、体力的には大変でしたが素晴らしいカステラの焼き上がりと、私たちの情熱が伝わり徐々に実績が出て行きました。これが今も続く「ミニ展」の始まりです。
さらに中古の2tトラックに「南蛮窯」とミキサー、発電機を積み、お客様のお店の前にトラックを横付けしてカステラを焼いてしまうという「デモトラック」を考え出し全国を回りました。これも重労働でしたが、とても大きな反響がありました。こうして「南蛮窯」は売れ始めたのです。

新たな業界洋菓子の世界へ

しかし、「南蛮窯」はカステラ専門のオーブンというイメージが強く、ターゲットが和菓子店や和洋菓子店に限られていましたから、ある程度売れてしまうとやがて市場が無くなってしまうことに気づきました。あの時ほど恐怖を感じたことはありません。
そこで、「バッケン」という洋菓子に特化したオーブンを開発したのです。当時の洋菓子専門店は生ケーキが中心で、焼き菓子を販売しようという考えのお店はとても少なく、オーブンの性能はそれほど重要視されていませんでした。
そこで福岡に「南蛮塾」という製菓指導員(現在のテクニカル)による焼き菓子の勉強の場を作り、洋菓子店にとって焼き菓子を販売していくことがいかに重要であるかをコツコツと提案しながら「バッケン」を販売していきました。
やがて、洋菓子専門店にとって焼き菓子が経営の軸になるにつれて「バッケン」の評価は高まり、たくさんのパティシエの皆様からご支持いただくようになりました。また、「マルシェ台」、「五感ゾーン」など洋菓子専門店様のお役に立つ販売企画をやつぎばやに提案し、おかげさまで「バッケン」は固定窯のトップブランドに成長いたしました。

ブランドをつくりあげるために

さらに、休む間もなく「スルーオーブン」「スチームラックオーブンZEN」「リムジン」「スチームコンベクションオーブンREN」「スーパーバッケン」、そして「オリジナル冷凍生地」の開発をしてまいりましたが、そのどれもが、お客様がお困りになっていることを真剣に考え、その壁を突き破るものでした
物事の進化の障壁を従来にない方法によって突破することを〝ブレイクスルー〟と言いますが、私はこの言葉が好きです。
私が今まで挑戦し続けてきた話がブランドの構築と繋がるかどうかはわかりませんが、とにかく死ぬ気で頑張り、どのような壁にぶつかっても諦めない気持ちを持ち続ける以外に方法はないと思います。また、必死で考え行動していると必ず活路が生まれます。
2度倒産した潰れる寸前の鉄工所、そして父が残した莫大な借金、そのような中でも何とか今の七洋製作所が存続しております。しかし、これも全てプレスをお読みになられているお客様のおかげだと心から感謝いたしております。

皆様方のご健闘をお祈りいたします。
羽田から福岡へ向かう機内にて

(このブログはNANBANプレス68号に掲載されたコラムを再編集したものです。)

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