Vol.19
不幸の種をまく
食中毒
今年の夏は冷夏の為、比較的昨年の夏よりも良かったと言われるお話しをあちらこちらでお聞きします。私は東京から博多へ向かう新幹線の中です。
「ローマ帝国は繁栄の時に不幸の種をまいていった」こういう言葉が御座います。
食に携わる私共にとって不幸の種とは何だろう?この事について書いてみます。
不幸の種をまく
昨年、そして今年、私共のお客様に食中毒が発生しました。その情報が入り私もスタッフと一緒にそのお店にすぐお伺いします。天と地がひっくり返るという言葉があるとしたらまさにその状況かもしれません。今まで笑顔で買いにこられていたお客様が、苦しみと不安と憎しみの表情に一変する。そして繁盛店としての隆盛を誇っていた店が一度に奈落のそこに落とされる。この様は深い悲しみとオーナーの苦悩を思うと私自身もなんとも表現できない状況です。
勿論、食中毒を出した事はそこのオーナーの全責任ではありますが、それに対する世の中の嵐のような厳しい制裁は、その店の方々全てが気が狂うようなお気持ちになられると思います。又お店が繁盛していれば繁盛しているほど、その嵐のような影響は大きく、社会的にも強く制裁を受けられます。
厨房の衛生管理は保健所の指導が入りますが、食中毒の被害に遭ったお客様に対してどのような対応をとり、いかに迅速に保障の問題と誠意を持った対処が出来るか、スピードある誠意のある対応こそが、次ぎにお店を再会する為の大きな鍵になることは事実であります。昨年の食中毒を起こされたお店の復旧に携わって行く中で、私共の会社には食中毒の時の対応マニュアルが必然的に出来上がりました。又その事に精通し自分の身を惜しまず働いてくれる、我社の竹内君には心より感謝致しています。
私共の業界では、発生する食中毒は一般的にはサルモネラ菌が多いと言われます。しかし2件とも保健所が事故を起こした厨房を検査しても菌は検出されませんでした。又商品を食べられた方々が、1つの商品で出るのではなく全般的な商品を食べられて出たという事になり、保健所により従業員の検便検査を行うと従業員の中に保菌者がいて、その保菌者による2次感染によって事故が起きた事になりました。
2次感染とは
あるお店の場合、店舗と厨房と事務所がマンションの1階にあり、社員の休憩室やトイレはマンションの2階になっています(こういったお店は全国に非常に多いように思います)。例えば、従業員が2階のトイレに行く、トイレを出る時トイレのノブをさわり、簡単な手洗いですませる又は何かの都合で手を洗わなかったとします。トイレのある部屋のノブをさわり、2階の玄関を出る為のノブをさわり、1階に降りる為のエレベーターもしくは扉のノブをさわり、事務所に入る為のノブをさわり、そして厨房に入る為のノブをさわる。これだけでも、6箇所の皆でさわるノブがある訳です。ましてやマンションのエレベーターや扉は不特定多数の方々が触っているという事です。もしその人がサルモネラの保菌者であったならば、厨房には入る時点でここで不完全な手洗いもしくは、忙しい夜中の仕事で手を洗う事さえ忘れてしまう。そして直接商品に触る。こんな事を考えてしまうといくらでもその可能性が有るという事になります。
手洗いに始り手洗いに終わる
やはり一番大切な事は厨房に入り仕事に取り掛かる前に絶対に間違いなく完璧な手洗いを実行する。衛生管理とは「手洗いで始り手洗いで終わる」当たり前の事ではありますが、この当たり前が忙しさや各人の怠慢により、崩れている事が事故の始りのような気が致します。再度ご自分の厨房を考えて見てこの事が従業員全てに浸透しているかを確認して頂きたいと思います。
今回のプレスの中で提案致しております、手洗いのシステムは私自身2度とこの様な事故が起こらない為にはどうしたらよいだろうか考えて、考えて、考えて、サラヤという会社の製品に着眼致しました。又その商品をフランス菓子16区の三嶋社長や色々な方々の御意見を頂き、私共なりに改良を加えた製品で御座います。
物事に完全は有得ません。しかし最善を尽くし、考えられる限りの食中毒への対策は必要だと思います。
食中毒のお詫びに実際にお客様に頭を下げながら回って行きますと、お客様の方から頑張って早くお店を再開してください。私はあなたの店のファンだからとお言葉を頂きます。ほとんどのお客様が善意のお客様である事に気づきますし、又なおさらこの様な事故はお客様の為に2度と起こしてはいけないと心から思います。
事故を起こされたお店の一日も早い再開を心より深く願います。頑張って下さい。
(このブログはNANBANプレス23号に掲載されたコラムです。)