Vol.14
「ある弁当との出会い」
「ある弁当との出会い」
身も凍るような寒い風が吹いている2月、私は新神戸の駅にいました。長い出張も終わりやっと家に帰る夕刻です、いつもこの時刻は新幹線の中で夕食を取ります、夕食と言っても弁当になるのですが、寒い日に新幹線の中で食べる冷たい弁当、出張帰りの開放感と冷たい弁当を食べるわびしさを感じるひとときです。新幹線は神戸を出てちょうど姫路あたりを快適に走っています。新神戸駅で何も考えず買った弁当でも食べようかと、封を空けます「あれ、この弁当普通の弁当とちょっと違うな」台形の鍋の形をした箱の横に、ここを引っ張って8分間経ってからフタを開けてお召し上がりくださいと書いてあります。おもむろにひもを引っ張り3分位経つと、中でぐつぐつと音がしてきて、外側がとても熱くなってきました。私はいったい何がこの中で起こっているのか、期待と不安でまんじりともしないで8分間待ちました。窓の外は雪が降り出し、雪の中を車のヘッドライトだけが遠く光って見えます「今日も寒いな」8分が経ち弁当のフタを開けます。ぶわーっと湯気が漂い中からすきやきの出来たて鍋が登場したのです。その驚きと言うか、感動は旅の疲れを一変で吹き飛ばしてくれました。中に殺菌された生卵が1個はいっておりそれを割って、出来たての肉をつけて食べる、冷え切った私の体はホッとし安堵感に包まれました。私が感動したのは、この弁当屋さんのここまで完成させるのにかなりの思考錯誤が繰り返されただろうなと言う作り手の思いです。きっと商売と言うよりもどうしたらお客様に感動と喜びを与えることが出来るか、そういった作り手の思いがじーんと伝わってきました。最近は独立されるお店の中で、オープンした時から繁盛店といったお店を見かける様になってきました。おいしい菓子が作れるから独立するのではなく、その作った菓子をどうやって販売していくのか、ここまで勉強されて独立されるからだと思います。菓子は生き物です。どんなに技術があり良い材料を作っても鮮度が悪ければおいしくありません。鮮度をいかに持続して出し続けることができるか、この答えは一つです。作った菓子が早く売れ、お客様の口に入るかだと言う事だと思います。「技術→材料→鮮度→商品が売れる事」この販売の流れは川の流れと一緒でどこが詰まってもよどんでしまいます。繁盛店とはオーナー自身がこの流れをうまく舵取りをされているお店だと思います。技術的な事は努力すればある程度カバーできますが、売る事は消費者の動向が刻々と変わる今、その捕らえ方が非常に難しいと言えます。売り方はあまり進みすぎてもお客様がついてこれないし、遅れすぎるともっと悪い結果が出てしまいます。そういった意味でこの弁当は一つの事を明示していると思います。従来の弁当の食材の多彩さと鮮度、そしてネーミングの面白さだけであったのを、できたて感の実際の温かさと湯気、ぐつぐつと言う音、玉子を実際に割って食べると言う臨場感、こういったお客様の五感に訴える事をこれでもかとばかりに仕掛けてあります。売れると言うキーワードは、現在ではオープンキッチンの店が増えてきた様にお客様にいかに近づくかと言う事ではないでしょうか。神戸、大阪はオープンキッチンの洋菓子店が非常に多い地域です。そういった中で弁当までオープンキッチンなんだなと感じた瞬間でもありました。皆様も神戸にいった折には是非このすき焼き弁当をご賞味して下さい。



