Vol.50
定番商品
定番商品
ある方と話をしていた時、ハワイで一番売れている菓子はなんだと思いますかと聞かれました。私はためらわず「マカデミアンナッツ。」と答えました。「そうですね。それでは10年後にハワイで一番売れている菓子はなんだと思いますか?」と聞かれ、私は即答できませんでしたが、その方は「余程のことがない限り、10年後もマカデミアンナッツですね。長崎県で一番売れている焼き菓子は「長崎カステラ」で、10年後もおそらく『長崎カステラ』だと思います。」とおっしゃいました。この短い会話は何気ないように思いますが、定番はあまり変化しないという非常に重要な話だと思います。
定番商品はおろそかにできない
洋菓子におけるおやつ菓子の定番はと考えてみると、「シュー」「ロール」「プリン」この3つがあげられます。これは生菓子であり、特に鮮度を重要とされる毎日生産しなければいけない商品です。人手がかかる割には単価的には低い商品です。しかしこれをおろそかにすると、定番であるがゆえに集客力が落ちてきます。要するに「定番商品で集客して、一番売りたい主力焼き菓子に繋げていく」この流れを守り続けていくことが大切なことではないかと思います。ここには人手の確保が重要になってきます。
北海道では30年前から人手不足
今から30年前、私が28歳頃の仕事は、南蛮窯によるカステラ焼成の指導を行う試運転の仕事をしておりました。北海道の最北端にある立派な建物の和洋菓子店に試運転に行った時の話です。
現在、業界では人手不足は深刻な問題ですが、この土地では30年前から人手不足でした。有名店や都会の菓子店のようにこの店で修業する人も皆無です。若者や技術者は皆、札幌やその近郊に集中してしまい、お菓子を作る人は、限られたスタッフと、お店の近くにお住まいの女性のパート従業員が、その一翼を担っていました。
南蛮窯が設置された場所は立派なお店の中ではなく、少し離れた小屋の中に作業台、冷蔵庫、ミキサー、そして南蛮窯が置かれ、そこの厨房には40歳代の近所の奥様方がパートとして働かれていました。
オーナー曰く、「この奥様方は良く稼いでくれる。」が口癖で、それゆえ奥様方にカステラを指導してくれという事でした。私が驚いたのは、とにかく覚えが早く、トイレへも行かないし休憩もしない。勿論おしゃべりなどされません。何年くらいお勤めですかと聞いてみますと、10年~15年の方ばかりです。奥様方は口々に「この店は働きやすい。」とおっしゃいました。オーナーは出来高制を取り入れられ、たとえば、今日カステラを1枚焼くとします。その日はPTAがあり学校に行かなくてはならない、そんな時は朝早く皆集まりカステラを焼いてしまいます。そして検品を受け、仕事を早朝出勤で終わらせて、皆でPTAに出るということです。
まさにこの当時から、このお店はフレックスタイムを採用されていた訳です。
出来高制にされているという点では、現在国が進めようという早朝出勤やフレックス制の導入による、夜の残業を減らそうとする考え方よりも、ある意味進んでいるといえます。要するに、今も昔も人手の無い地域では、それぞれオーナーが知恵を絞って菓子作りをやっておられるという事です。
三本の矢の意図
今回紹介されていますお店の省力化は、職人でなければ出来ない仕事を、機械の力でパートさんにしてもらい、その空いた時間を労働時間の短縮や、もっと磨きこんだ職人ならではの仕事に向けておられるお店の方々です。働く人が良い仕事が出来る環境づくり、この事こそが専門店が生き残っていくための活路ではないかと思います。
弊社が今提案しております、「三本の矢」すなわち「絞る」「焼く」「切る」は、主力焼き菓子や生菓子の定番商品を生産する原動力の提案です。私自身ものづくりを生業としているものとして、いつも考えていることは、製造技術の伝承とそれを受け継ぐ「人」の問題です。この問題は経営するうえにおいて絶対に避けられない事だと思います。
6月に東京ビッグサイトで開催されますFOOMA JAPANや現在各地で開催しておりますミニ講習会では、このテーマに明確にお答えいたします。是非、ご来場くださいませ。スタッフ一同お待ちいたしております。
(北海道から博多に帰る飛行機の中より)



