福岡県宮若市
瀬川菓子舗
電話
竹内 瀬川菓子舗様は和菓子、洋菓子、パンと幅広い品揃えをされていますが、品数はどれくらいでしょうか。
瀬川 売上構成でいきますと、フロランタンの〝キャロット〟という商品が25%、〝かりんとうまんじゅう〟が15%、〝フルーツ大福〟が15%、その他にもシューあり、ロールあり、プチガトーもありますし、葛のお菓子、羊羹、もなか等、全体的なアイテム数は姉妹品のようなものも細かく分けると80から100種類近くあります。
1923年に和菓子屋として創業以来、誕生日のケーキやお祝いのお餅、夏には落雁や水羊羹、そしてパンまで様々な地元の皆様のご要望に、和菓子、洋菓子、パンの技術を生かして応えられる店でありたいというのが私どものコンセプトで、それを私が引き継ぎ4代目となります。
竹内 菓子店の経営環境も大きく変化してきましたが、瀬川様が経営の上で大切にされていることはどのようなことでしょうか。
瀬川 そうですね。今の菓子店はどのお店にも似た商品が並ぶ傾向がありますが、私どもは餅もやる、ケーキもやる、パンもやる、いわゆる何でも屋なので、逆に何でも屋の良さをもっともっと出そうと思っています。
コンビニも凄く増えましたし近くにケーキ屋さんもできました。さらにお菓子はネットで買える時代にもなりました。こうなると私どもは機械では簡単にできないもの、それから和菓子専門店、洋菓子専門店が取り組みにくいもの、つまり何でも屋だからこそできる組み合わせの妙というか、そうした独自のものを見つけ出して差別化することが生き残る方法だと思います。
竹内 ところで、「パン オ パッション」を使った〝ソフトフランス〟をご案内したところ、すぐにメニュー化していただきましたが、理由をお聞かせいただけますでしょうか。
瀬川 七洋さんから〝ソフトフランス〟のご案内をいただいて、食べた時に「これはおいしい、このパンができるのか!」とワクワクしました。パンもやっていますから、そのおいしさはすぐにわかります。これも差別化の一手としてすぐにやろうということになりました。
竹内 〝ソフトフランス〟をどのように販売されているのでしょうか。
瀬川 焼き上げてそのまま〝ソフトフランス〟として、それから10等分くらいにカットして粒あんとフレッシュバターを挟んだ〝あんバターサンド〟、それからフルーツ、生クリーム、あんバターなどを挟んだ〝パーティーメガサンド〟を販売しています。
昨年、コロナ禍の中でお客様のご来店数が少なくなり、ご来店を増やそうにもお呼びかけしにくい状況が続きました。売り上げが減る中、何かできることはないかと考えていましたら、家内が、「せっかく〝ソフトフランス〟があるのだから、他のお店で出していないドカンと大きなフルーツサンドを出したらどう?」と言い出したのです。
想像しただけで笑ってしまいましたが、こうしたことはまずやってみることが大事だと思いスタッフに話すと、「すぐにやってみます。」と言うことで、フルーツなどを色々入れて試作してみました。皆で切って食べたら、結構ボリュームがあり、ケーキよりもはるかに食べ応えがあります。とにかくインパクトがありますから、お客様に楽しんでいただけるんじゃないかということで並べてみました。
竹内 お客様の反応はいかがでしたでしょうか。
瀬川 〝ソフトフランス〟はスムーズに売れ始めましたが、ショーケースの中にある〝パーティーメガサンド〟の大きさは圧倒的で、皆さん「おおーっ!」となりますが、最初はインパクトが強すぎたのか、どなたもお買い上げになりませんでした。残ったらスタッフの皆と食べてまかないになっていましたが、続けていましたらお客様に覚えていただいたようで、誕生日に予約が入るようになりました。
竹内 「パン オ パッション」の使い勝手はいかがでしょうか。
瀬川 私どもで50年近くつくっている丸い〝塩パン〟と比べて生地が安定していて断然つくりやすいですね。作業する厨房の温度は高い時には30℃、低い時には20℃を切るような条件で1年間やりましたが、浮かないとか生地が粗くてダメだという事はありませんでした。イーストと水を入れるだけでいいので、計量のミスもありません。
竹内 〝ソフトフランス〟は「南蛮窯」で焼成されていますが、焼き上がりはいかがでしょうか。
瀬川 凄く窯で伸びる気がします。あれだけ大きなパンがふんわりと裾がダレずに高さが出るのは、やはり密閉性の良さなのですね。
七洋さんの「南蛮窯」を入れたのは8年前です。その当時〝かりんとうまんじゅう〟が一日あたり1500個くらい売れるようになってオーブンが間に合わなくなったのです。それまで使っていたオーブンは2枚3段でしたから、3枚3段の「南蛮窯」を入れて焼成能力を1・5倍にしました。
さらに「南蛮窯」は焼成時間が短くて済み、以前のオーブンでは200℃で22分間焼いていたものが、今17~18分くらいで焼けるようになりました。おかげさまで窯待ちが大幅に減りましたね。
さらに「南蛮窯」の焼成は、ロールケーキのシートやスポンジを焼いてみると全然違いました。
以前、ロールケーキの配合とつくり方を教わって材料のブランドまで合わせて焼きましたが、品質を近づけることができませんでした。 「何が違うのだろう?」とそれ以来ずっと悩み続けていましたが、「南蛮窯」でロールケーキを久しぶりに焼いてみると、なんと教わった通りの品質に焼けるではありませんか。「なんだ、オーブンが違っていたのか!」とその焼成力に感心しました。
それまで洋菓子屋さんが「バッケン」や「南蛮窯」がジェノワーズにいい、シートが良くなるとおっしゃっている情報は耳に入っていましたが、「ああ、こういうことだったのだ。」とわかりました。 〝かりんとうまんじゅう〟のために入れた「南蛮窯」が店全体の商品レベルを上げてくれたと思います。
竹内 ありがとうございます。最後に今後のご展開をお聞かせいただけますでしょうか。
瀬川 そうですね。どうしてもお菓子には流行りすたりがありますが、店の土台をしっかりと守ってくれるような看板菓子を育てていきたいと思います。そのためにコツコツと新しい挑戦を続けて行こうと思っています。
取材後記
取材
七洋製作所 本社営業部長
竹内 浩